「ピアノの原点って、なんだっただろう?」
そんな問いの答えを探していた私の記憶の底から、ふと浮かび上がってきたのは、小学校1年生の夏でした。
初めてピアノのコンクールに挑戦したあの夏。
小さな手で、大きな舞台を目指して、毎日練習していました。
そのときに出会った、今でも交流のある大切な友人とご家族。
私たちはそれぞれ、ソロで出場していました。
同じ目標を持って、お互い必死に努力していた小さな私たち。
初めてのコンクールは、不安も緊張も、まだうまく理解できていませんでした。
でも、「もっと上手になりたい」という気持ちだけは、胸の中にしっかりとありました。
音が上手に出せた日、先生に褒められた日、悔しくて泣いた日……
小さな体で懸命に向き合っていたピアノとの日々。練習後に食べたご飯の時間を今でも鮮明に覚えています。
習い事のひとつ、というより、夢中になれる遊びに近かったのかもしれません。
誰かと比べるのではなく、昨日の自分を超えられることがうれしかった。
そしてそのことで、私は少しずつ
「自分って悪くないな」
「もっと頑張ってみたいな」
と、自分を好きになれていた気がします。
なにより、音楽そのものが大好きになっていった。
ピアノの音色に触れること、難しかった曲が少しずつ弾けるようになっていく過程、
そのすべてが、私にとって宝物のような時間でした。
その経験があったからこそ、翌年の2年生の夏、友人と連弾でコンクールに挑戦しようと自然に思えたのだと思います。
ワクワクしてたし、練習でお友達に会える日がいつも楽しみだった。
当時はその日々が当たり前だったけれど、今思えばかけがえのない時間だったと思います。
1年生の夏に、ひとりで努力する楽しさと、音楽に向き合う喜びを知った。
2年生の夏に、誰かと音を重ねる楽しさを知った。
練習のたびに笑い合っていたこと、呼吸を合わせるのが難しくて何度もやり直したこと、
舞台袖で「がんばろうね」と言い合ったこと――
そのすべてが、今の私を形作っています。
そうして、私の中に“音楽がアイデンティティになっていく”という流れが生まれていきました。
今思えば、1年生のあの夏が、私のすべての始まりだったんだと思います。
努力の楽しさ。
達成感。
自分自身との約束。
そして、音楽がくれた「自分らしさ」。
ピアノを弾くことが、私の“生き方そのもの”になっていった、そんな第一歩の夏でした。
あの頃の私が夢中になって積み上げてきた時間が、今の私の背中をそっと押してくれる気がします。
そして、これからもずっと、あの夏の私と一緒に、私は音楽を続けていくのだと思います。
音楽は、あの頃からずっと、私の中に生きているのです。


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