はじめに
「音感がいい子に育ってほしい」
「絶対音感って、何歳までに訓練すればいいの?」
「相対音感との違いって何?」
ピアノを習わせようと考えている保護者の方なら、一度は「音感」について疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。
音感には「絶対音感」と「相対音感」の2種類があります。よく「絶対音感がある方がすごい!」と思われがちですが、実はそう単純な話ではありません。
音楽を楽しむために本当に必要なのは、絶対音感なのか?相対音感なのか?それとも両方?この記事では、音感の基礎知識から、それぞれのメリット・デメリット、そして「子どもにどちらを育てるべきか」まで、わかりやすく解説します。
この記事を読めば、お子さまの音楽教育で本当に大切なことが見えてくるはずです。
目次
- そもそも「音感」とは?音を聞き分ける力の正体
- 絶対音感とは|音を「ドレミ」で聞き取る特殊能力
- 相対音感とは|音楽を楽しむために本当に必要な力
- 絶対音感と相対音感の違いを比較表でチェック
- 絶対音感は本当に必要?メリットとデメリット
- 相対音感の方が重要?プロが持っている音感とは
- 子どもにはどちらを育てるべき?年齢別の音感トレーニング
1. そもそも「音感」とは?音を聞き分ける力の正体
音感の定義
音感とは、音の高さ(音程)、長さ(リズム)、強さ(音量)、音色などを聞き分ける能力のことです。
私たちが音楽を「心地いい」「きれい」と感じるのは、この音感があるからこそ。音感は音楽を楽しむための基礎能力であり、誰もが多かれ少なかれ持っている力です。
音感に含まれる要素
・音程(音の高低を聞き分ける)
・リズム(音の長さやテンポを感じ取る)
・音色(楽器の違いなどを聞き分ける)
・ハーモニー(和音の響きを感じ取る)
音感は生まれつき?それとも育てられる?
「音感は才能」と思われがちですが、実は後天的に育てることができる能力です。
特に3歳から6歳頃までは聴覚が急速に発達する時期で、この時期に適切な音楽教育を受けることで、音感は飛躍的に向上します。
脳科学の視点
人間の聴覚は3歳までに約80%、6歳までに約90%完成すると言われています。幼少期の音楽体験が、その後の音感に大きく影響します。
2. 絶対音感とは|音を「ドレミ」で聞き取る特殊能力
絶対音感の定義
絶対音感とは、基準音なしに音の高さを「ドレミ」で正確に言い当てられる能力のことです。
例えば:
- 救急車のサイレンを聞いて「ミ♭とシ♭だ」とわかる
- 冷蔵庫の音を聞いて「ファの音だ」とわかる
- ピアノで弾かれた音を聞いただけで「ド#」と即答できる
つまり、音を聞いただけで、その音名を正確に特定できるのが絶対音感です。
絶対音感の特徴
・基準音(例えば「ラ」の音)がなくても音名がわかる
・すべての音が「ドレミ」に聞こえる
・訓練しないと身につかない特殊能力
・6歳頃までに訓練を始めないと習得困難
絶対音感を持つ人の割合
日本人の中で絶対音感を持つ人はわずか1〜2%程度と言われています。幼少期に音楽教育を受けた人の中でも、約10〜15%程度です。
つまり、絶対音感は非常に珍しい能力なのです。
絶対音感が身につく年齢
絶対音感の臨界期
絶対音感を身につけられるのは、一般的に**6歳頃まで**(遅くても7〜8歳まで)と言われています。それ以降は、どんなに訓練しても習得が難しくなります。
これは、脳の聴覚野が柔軟な時期に特定の訓練を行うことで、音を絶対的な高さとして認識する回路が形成されるためです。
絶対音感トレーニングの方法
絶対音感を身につけるには、専門的な訓練が必要です:
① 単音の聞き取り
- ピアノで「ド」を弾き、「これはド」と覚えさせる
- 毎日繰り返し、すべての音(ド〜シ)を記憶させる
② 和音の聞き取り
- 単音ができたら、和音(複数の音が同時に鳴る)の聞き取りへ
③ 毎日の継続
- 1日10〜15分程度を毎日続ける
- 最低でも1〜2年間の継続的な訓練が必要
絶対音感は「身につけさせるべき」ではない
後述しますが、絶対音感には一長一短があります。無理に訓練する必要はなく、お子さまが楽しめる範囲で音楽に触れさせることが大切です。
3. 相対音感とは|音楽を楽しむために本当に必要な力
相対音感の定義
相対音感とは、基準となる音を元に、他の音との関係(音程)を聞き分ける能力のことです。
例えば:
- 「ドレミファソラシド」を聞いて「最初の音より2番目の音は全音高い」とわかる
- メロディを聞いて「最初の音から5度上に跳躍した」とわかる
- ある曲がハ長調からニ長調に転調したことがわかる
つまり、音と音の関係性を理解し、相対的に音を聞き取る力が相対音感です。
相対音感の特徴
・基準音があれば、他の音との関係がわかる
・「ドレミ」ではなく「音程(インターバル)」で認識
・訓練すれば大人になっても習得可能
・音楽を演奏・作曲する上で非常に重要
相対音感を持つ人の割合
相対音感は、音楽を学ぶ人の多くが習得する能力です。ピアノやギター、歌など、何らかの楽器を継続的に学んでいれば、自然と身についていきます。
プロの音楽家のほぼ全員が相対音感を持っており、絶対音感がなくても問題なく演奏・作曲ができます。
相対音感が身につく年齢
相対音感には絶対音感のような「臨界期」はありません。何歳からでも訓練によって身につけることができます。
- 子ども:遊びを通じて自然に習得
- 大人:理論的な学習と実践で習得可能
相対音感は一生使える財産
相対音感は、音楽を楽しむ上で最も重要な能力です。楽器演奏、合唱、作曲、即興演奏——すべてに必要な基礎力となります。
相対音感トレーニングの方法
相対音感は、日常的な音楽活動の中で自然と育ちます:
① 歌を歌う
- 正しい音程で歌うことで、音程感覚が育つ
- 「ドレミで歌う」練習も効果的
② 楽器を演奏する
- ピアノ、ギター、バイオリンなど、どんな楽器でもOK
- 音を出しながら「この音とこの音の距離は?」を意識する
③ 音程の聞き取り練習
- 2つの音を聞いて、音程を当てる(2度?3度?5度?)
- アプリやオンライン教材も充実
④ 移調(キーを変える)練習
- 同じメロディを違うキーで弾く・歌う
- 音の関係性を体で覚える
4. 絶対音感と相対音感の違いを比較表でチェック
絶対音感 vs 相対音感 徹底比較 |項目 |絶対音感 |相対音感 | |————-|—————-|————–| |**定義** |音を聞いただけで音名がわかる |音と音の関係(音程)がわかる| |**基準音** |不要 |必要 | |**習得時期** |6歳頃まで(臨界期あり) |何歳からでも可能 | |**保有率** |約1〜2%(非常に珍しい) |音楽を学ぶ人の多く | |**訓練方法** |専門的な訓練が必須 |楽器演奏や歌唱で自然に習得 | |**音楽活動での重要度**|あると便利だが必須ではない |必須(演奏・作曲に不可欠) | |**日常生活** |すべての音が「ドレミ」に聞こえる|音楽の時だけ意識する | |**プロ音楽家** |持っていない人も多い |ほぼ全員が持っている |
一番の違いは「音の認識方法」
絶対音感:音を「固有名詞」として認識
- 「ラ」は「ラ」。他の音との関係は二の次
相対音感:音を「関係性」として認識
- 「最初の音より5度高い音」というように、音程で認識
例え話
・絶対音感:「この人は田中さん」と顔を見ただけでわかる(名前を覚えている)
・相対音感:「この人は、さっきの人より背が高い」と関係性でわかる(比較している)
5. 絶対音感は本当に必要?メリットとデメリット
絶対音感のメリット
① 音を一瞬で判別できる
- 楽譜がなくても、聞いた音をすぐに弾ける
- 耳コピ(聞いた曲を再現する)が得意
② 初見演奏が得意
- 楽譜を見た瞬間、音がイメージできる
- 読譜(楽譜を読むこと)のスピードが速い
③ 調律やピッチのズレに敏感
- 楽器の調律が狂っているとすぐにわかる
- アカペラやオーケストラでピッチを正確に保てる
絶対音感のデメリット
意外と知られていない「デメリット」 **① 日常の音がすべて「ドレミ」に聞こえる** – 車のクラクション、電子音、雑音まで音名で聞こえる – 人によっては「うるさく感じる」「疲れる」 **② 移調楽器が苦手になることも** – トランペットやサックスなど、記譜と実音が異なる楽器で混乱 – 「楽譜はドなのに、聞こえるのはシ♭」という違和感 **③ カラオケで原曲キー以外が気持ち悪い** – 音程を変えた曲(+2キーなど)に違和感 – ジャズの即興演奏などで柔軟性に欠けることも **④ 古楽器演奏で苦労する** – バロック音楽などで使われる「ラ=415Hz」などに違和感 – 現代ピアノ(ラ=440Hz)と微妙にズレる
絶対音感があっても音楽が得意とは限らない
重要な事実
絶対音感は「音名を言い当てる能力」であって、「音楽的に優れている」こととイコールではありません。 ・リズム感、表現力、ハーモニー感覚は別の能力
・絶対音感があっても、音楽がつまらない演奏をする人もいる
・相対音感の方が、音楽を楽しむ上では重要
6. 相対音感の方が重要?プロが持っている音感とは
プロ音楽家の多くは相対音感で演奏している
有名な音楽家でも、絶対音感を持っていない人は多いです。
- ベートーヴェン:晩年は聴覚を失ったが作曲を続けた(相対音感と音楽理論で作曲)
- ジャズミュージシャンの多く:相対音感でアドリブ演奏
- 世界的な指揮者やピアニストでも、絶対音感がない人は珍しくない
相対音感が音楽で重要な理由
① ハーモニーを理解できる
- 和音の響きや進行を感じ取る
- 「この和音の次にこの和音が来ると美しい」という感覚
② 移調(キーを変える)が自由自在
- どんなキーでも同じように演奏・歌唱できる
- カラオケでキーを変えても違和感なし
③ 即興演奏や作曲に不可欠
- 音と音の関係性を理解しているので、自由に音を組み立てられる
- コード進行や音階の理解が深い
④ アンサンブル(合奏)で調和を生む
- 他の楽器との調和を感じ取れる
- 「この音を少し低めに取ろう」など、柔軟な調整ができる
音楽教育の専門家の見解
「絶対音感は特殊能力。でも、音楽を深く楽しむために本当に必要なのは相対音感です。相対音感があれば、音楽の構造や美しさを理解し、自由に表現できます」
7. 子どもにはどちらを育てるべき?年齢別の音感トレーニング
結論:まずは「相対音感」を優先すべき
ピアノノギフトの考え方
当教室では、**まず相対音感を育てることを優先**しています。 理由:
・相対音感は音楽を楽しむために必須
・絶対音感には臨界期があるが、相対音感はいつでも育てられる
・絶対音感のデメリットもある
・お子さまが本当に必要と感じた時に、絶対音感訓練を検討すればOK
年齢別:音感トレーニングの方法
【2〜3歳】音楽に親しむ時期
目標:音楽は楽しい!という気持ちを育てる
- 手遊び歌、童謡をたくさん歌う
- リズムに合わせて体を動かす
- 音の高低(高い音・低い音)を遊びで体験
- ピアノの鍵盤を自由に触らせる
【4〜5歳】音感の基礎を作る時期
目標:音程感覚を養う、リズム感を育てる
- ドレミで歌う練習(階名唱)
- 音の聞き分けゲーム(どっちが高い?)
- リズム打ち(手拍子、タンバリン)
- 簡単なメロディをピアノで弾く
絶対音感訓練を始めるなら、この時期がリミット
- ただし、毎日の訓練が必要
- お子さまが楽しめるかが重要
- 無理強いは絶対にNG
【6〜8歳】音楽の基礎を固める時期
目標:楽譜を読む、音程を理解する
- 楽譜を見ながら歌う・弾く
- 音程(2度、3度、5度など)の聞き取り
- 簡単な和音の聞き取り
- 移調の練習(同じ曲を違うキーで)
この時期から相対音感は急速に発達
- ピアノやソルフェージュ(音楽の基礎訓練)で自然に身につく
【9歳以上】音楽的理解を深める時期
目標:理論と実践を結びつける
- 音階、和音、調性の理解
- 楽曲分析(この曲はどんな構造?)
- 即興演奏にチャレンジ
- 他の楽器や声楽との合奏
相対音感がしっかり身についていれば、音楽の幅が広がる時期
大人になってからでも遅くない
相対音感は何歳からでも訓練可能です。大人になってから楽器を始めても、練習を重ねることで十分に育ちます。「もう手遅れ」ということはありません!
よくある質問(FAQ)
Q1. 絶対音感がないと音楽は上達しませんか?
A. いいえ、まったくそんなことはありません。音楽を楽しむために絶対音感は必須ではありません。プロの音楽家でも絶対音感がない人は多く、相対音感があれば十分に演奏・作曲が可能です。
Q2. 絶対音感を身につけさせた方がいいですか?
A. お子さまが楽しんで訓練できるなら、選択肢の一つです。ただし、無理に身につけさせる必要はありません。絶対音感にはデメリットもあり、相対音感の方が音楽的には重要です。お子さまが「やってみたい」と言った時に、検討してみてください。
Q3. 音痴は治りますか?
A. はい、多くの場合は改善します。「音痴」の多くは、正しい音程で歌う経験が少ないだけです。相対音感を育てる訓練(歌う、楽器を弾く)を続けることで、音程は改善します。
Q4. うちの子、音感があるかどうか見分ける方法は?
A. 以下のような様子が見られれば、音感の素質があります:
- 歌をすぐに覚えて歌える
- リズムに合わせて体を動かすのが好き
- 音楽に興味を示す
- 音の高低を聞き分けられる
ただし、音感は訓練で伸びる能力なので、今できなくても心配ありません。
Q5. 大人ですが、今から音感を育てることはできますか?
A. できます!相対音感は年齢に関係なく育てられます。楽器を始める、歌を習う、音楽理論を学ぶなど、継続的に音楽に触れることで、大人でも音感は向上します。
まとめ:音楽を楽しむために本当に必要なのは「相対音感」
この記事のポイントをおさらいしましょう:
絶対音感とは
- 音を聞いただけで音名がわかる特殊能力
- 6歳頃までに訓練しないと習得困難
- 持っている人は約1〜2%
- メリットもあるがデメリットも存在
相対音感とは
- 音と音の関係性(音程)を聞き分ける能力
- 何歳からでも訓練可能
- 音楽を演奏・作曲する上で必須
- プロの音楽家のほぼ全員が持っている
子どもにはどちらを育てるべき?
- まずは「相対音感」を優先
- 音楽を楽しむために本当に必要なのは相対音感
- 絶対音感は、お子さまが希望した時に検討すればOK
一番大切なのは「音楽を楽しむ心」
- 絶対音感があっても、音楽を楽しめなければ意味がない
- 相対音感を育てながら、音楽の喜びを感じられる教育を
ピアノノギフトからのメッセージ
音感は「持っているか・いないか」の二元論ではありません。どんなお子さまでも、音楽に触れ続けることで、自然と音感は育ちます。焦らず、楽しみながら、お子さまの音感を育てていきましょう。
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この記事を書いた人
ピアノノギフト
日比谷・三田・田町で2歳〜小学生を対象にしたピアノ教室を運営。「個性と表現の自由を育てる」をコンセプトに、一人ひとりに寄り添ったレッスンを提供しています。
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最終更新日:2025年10月31日


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