「ピアノ辞めたい!」と泣かれたとき、胸がぎゅっとなりませんか。
せっかく始めた習い事。本人が「やりたい」と言ったから始めたのに。ピアノだって安くない。先生にも申し訳ない。でも、泣いている我が子を無理やり練習させるのも違う気がする。
「どうしたらいいんだろう」と悩むママへ。ピアノ講師として何百人もの生徒を見てきた中で、この場面は本当によくあります。そして、この瞬間のママの声がけ一つで、その後の展開が大きく変わることも知っています。
今日は、泣いているお子さんへの向き合い方と、具体的な声がけを7つお伝えします。
「辞めたい」の裏にある本当の気持ち
お子さんが「辞めたい」と言うとき、本当に辞めたいと思っているとは限りません。
多くの場合、その言葉の裏には別の感情が隠れています。「うまく弾けなくて悔しい」「練習がつまらない」「他のことがしたい」「疲れている」「先生が怖い」「お友達と比べられるのが嫌」。理由はさまざまです。
大人だって、仕事で壁にぶつかったときに「もう辞めたい」と思うことがあります。でも、本気で辞めたいわけではなくて、「今がつらい」と誰かに聞いてほしいだけだったりする。お子さんも同じです。
だからこそ、「辞めたい」という言葉だけを聞いて判断するのではなく、その奥にある気持ちに目を向けることが大切です。
ママからの声がけ7選
1「そっか、辞めたいんだね」
まず最初にやるべきことは、気持ちを受け止めることです。
「何言ってるの」「せっかく始めたのに」と返したくなる気持ちはわかります。でも、お子さんが勇気を出して伝えた気持ちを最初に否定してしまうと、そこから先の会話が成り立たなくなります。
「そっか、辞めたいんだね」。ただそれだけでいい。同意しているわけではありません。「あなたの気持ちは聞こえたよ」と伝えているだけ。この一言があるかないかで、お子さんの安心感はまったく違います。
こんな声がけはNG
「せっかく高いピアノ買ったのに」「あなたがやりたいって言ったんでしょ」。事実ではあっても、泣いている子どもには届きません。まず受け止めてから、が鉄則です。
2「何が嫌だったの?教えて」
気持ちを受け止めたら、次は理由を聞きます。
ここで大切なのは、「なんで辞めたいの?」ではなく「何が嫌だったの?」と聞くこと。「なんで」という言葉には、無意識に責めるニュアンスが含まれます。「何が」に変えるだけで、お子さんは答えやすくなります。
すぐに答えられないこともあります。そのときは急かさないでください。「今すぐじゃなくていいよ。気持ちが落ち着いたら教えてね」。これだけで十分です。
理由がわかれば、対処の方法も変わります。曲がつまらないなら曲を変える。練習が長すぎるなら短くする。先生との相性なら教室を変える。「辞める」以外の選択肢が見えてくることがほとんどです。
3「難しいよね。それだけ頑張ってたんだね」
お子さんが「うまく弾けない」「難しい」と言ったとき、この声がけが効きます。
「難しい」と感じているということは、それだけ真剣に取り組んでいる証拠です。適当にやっていたら、難しいとすら思いません。つまり、「難しい」と言えるお子さんは、ちゃんと頑張っているのです。
「難しいよね。それだけ頑張ってたんだね」。この一言で、お子さんの中に「自分はダメだ」ではなく「自分は頑張っていたんだ」という認識が生まれます。気持ちの切り替えのきっかけになることが多いです。
レッスン中に泣き出す子がいます。うまく弾けなくて悔しいんですね。そんなとき私は「悔しいってことは、ちゃんと弾きたいって思ってるってことだよね。それってすごいことだよ」と伝えます。すると、涙を拭いてもう一回弾き始める子が本当に多いんです。
4「今日はお休みにしようか」
疲れているとき、気分が乗らないとき、無理に練習させても身になりません。
「今日はお休みにしようか」と言ってあげるだけで、お子さんはほっとします。そして多くの場合、翌日には自分から練習に戻ります。一日休んだからといって、それまでの積み重ねがなくなるわけではありません。
大人だって、毎日100%で走り続けることはできません。休む日があるから続けられる。お子さんも同じです。
ただし、毎日「お休み」が続くようであれば、それは別の問題があるサインかもしれません。そのときは、2つ目の「何が嫌だったの?」に戻って、じっくり話を聞いてみてください。
5「最初に弾けた曲、覚えてる?」
壁にぶつかっているとき、お子さんの視界には「できないこと」しか映っていません。
そんなとき、過去の成長を一緒に振り返ることがとても効果的です。「最初に弾けた曲、覚えてる?」「あのとき、ドレミファソだけで大喜びしてたよね」「今はこんなに長い曲が弾けるようになったんだよ」。
お子さん自身は、自分がどれだけ成長したかに気づいていないことが多いです。ママが具体的に思い出させてあげることで、「あ、私こんなにできるようになってたんだ」と感じられる。その気づきが、もう一歩踏み出す力になります。
動画や写真が残っていると、さらに効果的です。スマホに保存してある発表会や日々の練習の動画を一緒に見てみてください。過去の自分と今の自分を比べることで、成長が目に見えてわかります。
6「辞めてもいいよ。でもあと1ヶ月だけ続けてみない?」
この声がけには、2つの大切な要素が入っています。
1つ目は「辞めてもいいよ」。お子さんの選択肢を認めること。これだけで、追い詰められた感覚がやわらぎます。
2つ目は「あと1ヶ月だけ」。期限を区切ること。終わりが見えると、人は頑張れます。「ずっと続けなきゃ」と思うからつらいのであって、「あと1ヶ月」と思えれば、気持ちのハードルが下がります。
そして不思議なことに、1ヶ月後には状況が変わっていることがほとんどです。新しい曲に進んだり、発表会が終わったり、壁を乗り越えていたり。「もう少し続けてみようかな」と自分から言い出すことも珍しくありません。
7「ママはあなたのピアノが好きだよ」
最後に、一番シンプルで一番大切な声がけです。
「上手に弾けたから好き」ではなく、「あなたのピアノが好き」。上手かどうかは関係ない。あなたが弾いているピアノの音が、ママは好き。
この言葉は、お子さんにとって「評価」ではなく「存在の肯定」になります。上手にならなきゃ、完璧に弾かなきゃ、というプレッシャーから解放してあげる力があります。
練習がうまくいかなくて落ち込んでいるとき。発表会の前で緊張しているとき。辞めたいと泣いているとき。いつでも使える、万能の声がけです。
発表会のあと、お母さんが「上手だったね」ではなく「今日のピアノ、すっごく良かった。ママ、聴いていて幸せだった」と言ったのを聞いたことがあります。そのお子さんの顔が、ぱっと明るくなったのを今でも覚えています。「上手」よりも「好き」のほうが、子どもの心には深く届くのだと思います。
「辞めたい」は成長のサイン
最後にお伝えしたいのは、「辞めたい」と言えること自体が、成長の証だということです。
自分の気持ちを言葉にできる。嫌なことを「嫌」と伝えられる。それは、お子さんの自己主張の力が育っているということ。本当に何も感じていなければ、泣きもしないし、辞めたいとも言いません。
だから、「辞めたい」と言われたときに、がっかりする必要はありません。「この子はちゃんと自分の気持ちを持っているんだな」と、まずは受け止めてあげてください。
そのうえで、7つの声がけを試してみてください。すべてを使う必要はありません。お子さんの性格や状況に合ったものを、一つでも二つでも。きっと、何かが変わるきっかけになります。
ピアノノギフトでは、お子さんが「弾きたい」と思える気持ちを大切にしています。
辞めたい気持ちも、続けたい気持ちも、どちらもお子さんの大切な本音です。
一緒に、お子さんに合ったペースを見つけていきましょう。
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