「今日は行きたくない」「あの曲は弾きたくない」「先生を変えてほしい」。
習い事に関するお子さんのわがまま、どこまで聞いてあげればいいのか。全部聞いたらキリがない。でも、全部無視したら親子関係が壊れそう。その塩梅が、本当に難しい。
「わがまま」と一口に言っても、聞いたほうがいいわがままと、聞かないほうがいいわがままがあります。その見極め方を知っているだけで、ママの判断がぐっと楽になります。
そもそも「わがまま」なのか?
お子さんの主張を「わがまま」と感じるとき、一度立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
それは本当にわがままなのか。それとも、お子さんなりの「SOS」なのか。
大人が「行きたくない」と言えば、「何か事情があるんだろうな」と思います。でも、子どもが同じことを言うと、「またわがまま言って」となりやすい。子どもは語彙が少ないぶん、複雑な感情を「行きたくない」「嫌だ」という短い言葉で表現するしかないのです。
「行きたくない」の裏に、「今日は疲れている」「お友達と何かあった」「練習が足りなくて不安」「先生に怒られるのが怖い」など、さまざまな事情が隠れていることがあります。
まずは「わがまま」と決めつけずに、「何があったのかな?」と一歩引いて考えてみてください。
聞いたほうがいいわがまま
「今日は行きたくない」が続くとき
一日だけなら気分の波。でも、何週間も続くなら、何か深い理由があります。先生との関係、教室の雰囲気、レッスンの内容、お友達とのトラブル。お子さんの言葉だけでなく、表情や態度にも注目してください。本当につらそうであれば、無理に通わせることは逆効果です。
じっくり理由を聞いて、必要なら先生に相談する。環境を変える選択肢も視野に入れる。
「この曲をやりたい」「あの曲は嫌」
これは「わがまま」に見えて、実は自我の成長です。自分の好みがはっきりしてきた証拠。好きな曲には集中力が倍になるし、嫌いな曲では何倍も時間がかかる。お子さんの「やりたい」を取り入れることで、練習への意欲がまったく変わることがあります。
先生に「本人がこの曲を弾きたがっています」と伝えてみる。レッスンに本人の希望を反映してもらえることが多い。
「もっとやりたい」「もう一回弾きたい」
これは嬉しいわがまま。時間やスケジュールの制約はあっても、できるだけ応えてあげてほしい。お子さんの「もっとやりたい」は、最も純粋なモチベーションです。大人が「もういいでしょ」と止めてしまうのはもったいない。
可能な範囲で時間を作る。「あと一回だけね」と決めるのも良い方法。
聞かないほうがいいわがまま
「面倒くさいから今日はやらない」
気分で練習をサボる習慣がつくと、ピアノだけでなく他のことにも「面倒だからやらない」が広がっていきます。体調が悪い日や特別な事情がある日は別。でも、「なんとなく面倒」で休む癖は、早いうちに対処したほうがいい。
「5分だけやってみよう」と声をかける。5分で終わってもいい。「やらなかった日」をゼロにすることが大事。
「○○ちゃんと同じ先生がいい」「○○ちゃんと同じ曲を弾きたい」
お友達に影響された要望は、その子自身の気持ちから来ていないことがほとんどです。お友達の先生が合うとは限らないし、お友達の曲がその子のレベルに合っているとも限りません。
「○○ちゃんのことが好きなんだね」と気持ちは受け止めつつ、「あなたにはあなたのペースがあるよ」と伝える。
「ご褒美くれないならやらない」
ご褒美で釣る習慣がつくと、ご褒美がないと動けない子になります。最初は効果があるように見えても、長い目で見るとマイナスです。習い事は、やること自体に意味がある。ご褒美は「たまに、サプライズで」が理想です。
「ご褒美がなくても、ピアノを弾けること自体がすごいことだよ」と伝える。練習そのものの価値を認める声がけに切り替える。
見極めの3つの基準
基準1:一時的か、継続的か
一日だけの「行きたくない」は、気分の波。一週間以上続く「行きたくない」は、何かのサイン。一時的なわがままには毅然と対応し、継続的なものにはじっくり耳を傾ける。この区別が、最も基本的な見極め方です。
基準2:感情から来ているか、思考から来ているか
「嫌だ!」と泣きながら言うのは、感情的なわがまま。時間が経てば落ち着くことが多い。一方で、「あのね、○○だから嫌なの」と理由を言えるときは、お子さんなりに考えた結果の主張。後者は、しっかり聞いてあげる価値があります。
基準3:お子さんの表情
言葉よりも表情を見てください。わがままを言いながらも目が輝いている子は、甘えているだけ。わがままを言いながら目が曇っている子は、本当に困っている。お子さんの目を見れば、ママにはわかるはずです。
迷ったときは、「この子の5年後にとって、今どうするのがいいだろう?」と考えてみてください。目の前のわがままに振り回されず、少し長い目で見ることで、判断がしやすくなります。
「全部聞く」でも「全部無視」でもなく
わがままへの対応に正解はありません。でも、一つだけ確かなことがあります。
お子さんのわがままは、成長の証だということ。
自分の気持ちを主張できる。嫌なことを嫌と言える。こうしたいという希望を持てる。それは、心が健全に育っているからこそできることです。
だから、わがままを言われること自体を嘆く必要はありません。大切なのは、「聞く」と「聞かない」の線引きを、ママなりに持っておくこと。その線引きは、お子さんの性格や年齢によって変わります。正解は一つではなく、お子さんの数だけあります。
全部聞いてしまうと、お子さんは自分で乗り越える力を身につけられません。全部無視してしまうと、お子さんは自分の気持ちを表現することを諦めてしまいます。
聞くときは、しっかり聞く。聞かないときは、理由を伝えて毅然とする。この「メリハリ」が、お子さんの安心感と自立心の両方を育てます。
レッスンで「この曲嫌い」と言う子がいます。そんなとき私は「そっか、嫌いなんだね。どこが嫌?」と聞きます。「全部」と言われたら「じゃあ一回だけ弾いてみて、それでも嫌だったら考えよう」と提案します。一回弾いてみたら「やっぱりちょっと好きかも」と言い出す子、実は多いんですよ。
ピアノノギフトでは、お子さんの「やりたい」も「やりたくない」も大切にしています。
わがままの奥にある本当の気持ちに、一緒に耳を傾けましょう。
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