でも、自分の子どもが生まれたとき、「音楽を教える」ということの意味が、根っこから変わりました。
今日は、そんな話を書いてみたいと思います。
「教える」から「届ける」へ
息子が生まれる前の私は、ピアノを「教える」ことに集中していました。正しい指の形、リズムの取り方、表現の仕方。技術を伝えることが、先生としての役割だと思っていました。
でも、生まれたばかりの息子を抱っこしながら、ふと口ずさんだ子守唄。息子はその歌を聴いて、すぅっと眠りました。
あの瞬間、音楽って「教える」ものじゃなくて「届ける」ものなんだ、と感じたのです。
生まれたての赤ちゃんが教えてくれたこと
新生児の息子は、もちろんピアノなんて弾けません。音符も読めないし、リズムもわからない。
でも、音に反応するんです。高い音を弾くと目をぱちっと開けて、低い音をゆっくり弾くと穏やかな表情になる。音楽を「わかっている」のではなく、「感じている」。
子どもにとって音楽は、勉強ではなく、空気のように自然にそこにあるものなんだと、息子が教えてくれました。
レッスンで「伝えたいこと」が変わった
出産後、レッスンに戻ったとき、生徒さんたちへの接し方が自然と変わっていました。
以前は「ここ、もう少しこうしてみよう」と技術にフォーカスしていた場面で、「この曲、弾いてみてどう感じた?」と聞くようになりました。
音楽を「感じること」のほうが先にあっていい。
息子を育てながら、そう思えるようになりました。
上手に弾けなくても、その子がピアノの前で感じている何かがある。それを大切にしたい。そう思えるようになったのは、間違いなく、息子のおかげです。
子育てと音楽教育の共通点
待つこと
赤ちゃんは、こちらの思い通りには動きません。泣き止まないし、寝てほしいときに寝ないし、飲んでほしいときに飲まない。でも、待っていれば、その子のタイミングでちゃんとやってくれます。ピアノも同じです。弾けるようになるタイミングは、その子が決めるものです。
信じること
「この子は大丈夫」と信じること。子育てでも、レッスンでも、いちばん大切なのはこれだと思います。不安になると口を出しすぎてしまう。でも、その子の力を信じて見守ることで、子どもは自分の力で伸びていきます。
一緒に喜ぶこと
息子が初めて寝返りをしたとき、家族全員で大喜びしました。ピアノでも、1曲弾けるようになったとき、先生が心から「すごいね!」と喜ぶ。その共感が、子どものやる気を育てます。
音楽を教えることは、愛を伝えること
大げさに聞こえるかもしれませんが、息子が生まれてから、私にとって音楽を教えることは「愛を伝えること」になりました。
あなたの音が好きだよ。あなたのペースでいいよ。あなたがピアノを楽しんでくれたら、それがいちばん嬉しい。
そんな気持ちでレッスンができるようになったのは、母になったからこそだと思います。
それ自体が、もう愛の形です。
その気持ちを、一緒に大切に育てていきたいと思っています。
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