自分の命よりも大切なものが、この世にあるということ。
それは頭で理解するものではなく、体の奥から湧き上がるように、ただそこにあった。
「死ねない」と思った日
息子と過ごす毎日のなかで、ふとした瞬間に思うことがある。
この子が成人するまでは、絶対に死ねない。
それは悲壮な決意というよりも、もっと静かで、当たり前のような感覚だった。朝起きて、息子の寝顔を見て、「今日も元気でいよう」と思う。ご飯をちゃんと食べよう、無理しすぎないようにしよう、健康診断もちゃんと行こう。そういう小さなことの積み重ねが、全部この子につながっている。
母になる前の私は、正直そこまで自分の体を大切にしていなかっただろうと思う。でも今は違う。私が元気でいることが、この子の安心につながると知ったから。
同時に「命をかけられる」と思った
矛盾しているようだけれど、「死ねない」と思う一方で、「この子のためなら命をかけられる」とも思った。
もし何か起きたとき、迷わずこの子を守る側にいたい。そう思える存在がいることが、こんなにも心を強くするとは知らなかった。
自分の命より大切なものが初めてできた。その重さと温かさを、毎日抱きしめながら生きている。
でも、彼は彼の人生を生きる
これだけ大切に思っていても、私は息子の人生に介入するつもりはない。
彼は私の子どもであると同時に、ひとりの独立した人間だ。いつか自分で考え、自分で選び、自分の足で歩いていく。そのとき私がすべきことは、道を指し示すことではなく、安心して戻ってこられる場所であり続けることだと思う。
「ああしなさい」「こうしなさい」と言いたくなる日が来るかもしれない。心配で仕方なくなる日もあるだろう。でも、彼の人生は彼のものだ。私にできるのは、愛情をたっぷり注いで、「何があっても大丈夫だよ」と伝え続けること。
子どもは安心できる場所があるからこそ、外の世界に飛び出していける。
冒険して、転んで、泣いて、でも「帰る場所がある」と知っているから、また立ち上がれる。
私たち親がなるべきは、その安心基地なのだと思います。
ピアノ教室も、安心基地でありたい
この気持ちは、ピアノの先生としての私にも影響を与えている。
レッスンに来てくれる生徒さん一人ひとりにとって、教室が安心できる場所であってほしい。間違えても笑われない。うまくいかなくても否定されない。「ここに来ると安心する」と思ってもらえる場所。
そういう場所だからこそ、子どもたちは新しい曲に挑戦できるし、自分なりの表現を見つけようとする。安心基地があるからこそ、成長できるのだと信じている。
愛情は「見守ること」にかたちを変えていく
息子はまだ小さくて、今は抱っこして、ご飯をあげて、一緒に遊んで。目に見えるかたちで愛情を伝えられる時期だと思う。
でもいつか、その愛情のかたちは変わっていくはずだ。手を出すことから、手を出さないことへ。教えることから、見守ることへ。
それはきっと、今よりもずっと難しい。口を出したくなるのを我慢して、転びそうな背中をただ見守る。そんな強さが、これから私には必要になるのだろう。
でも、大丈夫だと思える。だって私には「この子のためなら」という、これまでの人生で最も強い動機があるから。
その存在が教えてくれたのは、
「愛する」ということは「信じて手を離す」ことでもあるということ。
彼が自分の人生を歩んでいけるように、
私たち親は愛情たっぷりの安心基地であり続けたい。
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