子育ての本にも、SNSにも、そう書いてある。頭ではわかっている。
でも、実際にやろうとすると苦しくなることがある。
それは、あなたが悪い親だからではありません。人間として当然の葛藤です。
「あるがまま」を受け止めるのが難しい理由
子どもをありのまま受け止める。言葉にすると美しいけれど、これほど難しいことはありません。
なぜなら、私たち大人は「こうあってほしい」という期待を持っているからです。元気に挨拶できる子になってほしい。勉強もそこそこできてほしい。友達と仲良くしてほしい。ピアノも上手になってほしい。
これは愛情の裏返しです。子どもの幸せを願うからこそ、「こうなれば幸せになれるはず」という理想像を描いてしまう。そして、目の前の子どもがその理想と違うとき、葛藤が生まれるのです。
大人が感じる4つの葛藤
① 「受け止めたい」と「直したい」の間で揺れる
子どもが引っ込み思案で、お友達の輪に入れない。「そのままでいいよ」と言いたい気持ちと、「もう少し積極的になってほしい」という気持ちが同時にある。
この矛盾は自然なことです。「受け止める」と「導く」は対立するものではなく、両方あっていい。大切なのは、どちらか一方に偏りすぎないことです。
② 周囲の目が気になる
公園で子どもが大声で泣いている。スーパーで床に寝転がっている。「あのお母さん、ちゃんとしつけてないのかしら」という視線が怖い。
本当は「泣きたいだけ泣かせてあげたい」のに、周りの目を気にして「泣き止みなさい」と言ってしまう。この葛藤を感じたことのないお母さんは、おそらくいません。
③ 自分の育てられ方との戦い
「私はこうやって育てられた」「親にこう言われて育った」。自分が受けた子育てが、無意識のうちに自分の子育ての基準になっていることがあります。
厳しく育てられた人は、子どもに甘くすることに罪悪感を覚える。放任で育った人は、子どもに構いすぎることを不安に思う。あるがままを受け止めたいのに、自分の中の「こうすべき」という声が邪魔をする。
④ 「このままでいいのか」という不安
子どものペースを尊重したい。でも、のんびりしすぎて大丈夫だろうか。他の子はもっと先に進んでいるのに。ピアノだって、同じ年齢の子はもっと弾けているのに。
比較しないと決めても、情報が目に入ってくる。そのたびに「このままで大丈夫?」という不安が押し寄せる。これもまた、愛情ゆえの葛藤です。
ピアノの先生として「ありのままを受け止めましょう」と言っている私自身が、
母親としては「もっとこうなってほしい」と思ってしまう。
その矛盾を認めることが、私にとっての第一歩でした。
葛藤との向き合い方
葛藤を「悪いもの」にしない
まず大切なのは、葛藤を感じている自分を責めないことです。「あるがままを受け止められない私はダメな親だ」と思う必要はありません。
葛藤があるということは、子どものことを真剣に考えている証拠です。何も考えていなければ葛藤は生まれません。揺れているということは、それだけ深く向き合っているということです。
「今日はここまで」でいい
あるがままを受け止めることは、24時間365日完璧にやり続けることではありません。今日は受け止められた。でも昨日はつい怒ってしまった。それでいいのです。
子育ては長距離走です。毎日100点を目指すのではなく、「今日はここまでできた」と自分を認めてあげること。その余裕が、子どもを受け止める余裕にもつながります。
自分自身のあるがままも受け止める
子どものあるがままを受け止めるためには、まず自分自身のあるがままを受け止めることが必要です。
イライラする自分。不安になる自分。比較してしまう自分。完璧じゃない自分。
そんな自分を「ダメだ」と否定するのではなく、「そういう自分もいるんだな」と認める。子どもに対してやろうとしていることを、まず自分にやってあげる。
自分を受け止められる人は、他者も受け止めることができます。
「完璧な親」ではなく「修復できる親」になる
怒ってしまった。否定してしまった。比較してしまった。そんなとき、大切なのは「完璧でなかったこと」ではなく、「そのあとどうするか」です。
「さっきは怒りすぎちゃったね、ごめんね」と伝える。「あなたのペースでいいんだよ」と言い直す。この「修復」の経験が、子どもに「失敗しても大丈夫」ということを教えます。
ピアノ教室で見る「あるがまま」
ピアノのレッスンでも、「あるがまま」を受け止める場面はたくさんあります。
テンポが遅い子。音を間違えやすい子。すぐに飽きてしまう子。泣いてしまう子。それぞれ個性があり、それぞれのペースがある。
私が心がけているのは、その子の「今」を見ること。他の子と比べるのではなく、先週のその子と比べる。昨日のその子と比べる。小さな成長を見つけて、言葉にして伝える。
「先週より指がスムーズに動いてるよ」「この部分、前より音がきれいになったね」。その子自身の成長に目を向けることが、あるがままを受け止めるということだと思っています。
葛藤があって当然です。揺れて当然です。
でも、その葛藤を抱えながらも
子どものそばにいようとするあなたは、もう十分素敵な親です。
完璧じゃなくていい。揺れながらでいい。
あなた自身のあるがままも、どうか大切にしてください。
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