「イヤ!」「自分でやる!」「こっちがいい!」
わがままに見えるその言葉、実は心が育っている証拠です。
大切なのは「止める」ことではなく、「導く」ことです。
スーパーで「これ買って!」と泣き叫ぶ。お着替えのとき「この服じゃなきゃイヤ!」と譲らない。お友だちのおもちゃを「貸して」と言えずに奪ってしまう。
毎日毎日、「わがまま」に振り回されて、ぐったり。「しつけが足りないのかな」「私が甘やかしすぎたのかな」──そう自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、「わがまま」に見えるその行動の多くは、お子さんの「自我」が健全に育っている証拠です。
この記事では、「わがまま」の正体と対処法、そして「わがまま」がピアノの表現力とどうつながるのかをお伝えします。
「わがまま」の正体は「自我の成長」
2〜5歳のお子さんが「イヤ」「自分で」「こっちがいい」と言い始めるのは、発達心理学では「自我の芽生え」と呼ばれます。
「自分の気持ちがわかるようになった」
という成長のサイン。
「わがまま=悪いこと」と一括りにするのではなく、「何を主張しているのか」に目を向けることが大切です。
「わがまま」と「自己主張」の違い
自分の欲求を
相手の気持ちを無視して通す
自分の気持ちを
相手に伝えようとする
子どもの「わがまま」の多くは、「自己主張」の未熟な形です。必要なのは、自己主張をやめさせることではなく、「伝え方」を一緒に育てていくことです。
「わがまま」への対処法5つ
「そっか、これがよかったんだね」「自分でやりたかったんだね」気持ちを言葉にしてもらえると、子どもは「わかってもらえた」と感じて、少し落ち着きます。受け止めることは、許すことではありません。「あなたの気持ちはわかるよ」と伝えることです。
「赤い服と青い服、どっちにする?」「先にやるのと、後でやるの、どっちがいい?」
どちらを選んでもママがOKな選択肢を2つ用意すること。子どもは「自分で選んだ」満足感を得て、ママも困りません。
「ダメ!」だけでは、子どもは「なぜダメなのか」がわかりません。短くてもいいので「なぜ」を伝える。3歳でも4歳でも、理由を言ってもらえると、少しずつ「ルール」を理解していきます。
「『イヤ』じゃなくて、『こっちがいい』って言ってみようか」「泣かなくても、『かして』って言えば貸してもらえるよ」
気持ちを否定するのではなく、伝え方を「アップグレード」してあげる。これを繰り返すうちに、子どもは自分の気持ちを言葉で伝えられるようになっていきます。
幼稚園ではいい子なのに、家では激しくわがまま──これは、家が「安心して自分を出せる場所」である証拠です。
気持ちを出せる場所がある子は、心が健康に育ちます。
「わがまま」と「表現力」は、根っこが同じ
ここからが、この記事でいちばん伝えたいことです。
「わがまま」の正体は、「自分の気持ちがわかること」と「それを外に出したいこと」でした。実はこれ、「表現力」の原型そのものなのです。
それを「外に出したい」と思うこと。
──表現力は、ここから始まる。
わがままが激しい子は、「自分の中にある何か」がとても豊かだということ。その豊かさは、表現力の素地になります。
問題は、「出す方法」がまだ「イヤ!」しかないこと。もし「イヤ!」以外の表現手段を持てたら──お子さんの世界は大きく変わります。
ピアノが「わがまま」を「表現力」に変える
「イヤ!」の代わりに「音」で伝えられる
ピアノは、言葉を使わずに自分の気持ちを表現できる楽器です。怒っているときは激しい音。嬉しいときは明るい音。「イヤ!」と叫ぶ代わりに、鍵盤を力強く弾く。
ピアノは、子どもに「イヤ以外の表現手段」を贈ります。
「自分で決める」体験がたくさんある
わがままな子は、「自分で決めたい」欲求が強い子です。ピアノのレッスンでは、「この曲どう弾きたい?」「ここは大きく弾く?小さく弾く?」と、お子さん自身に選んでもらう場面がたくさんあります。
「自分で決める」体験が満たされると、日常の「わがまま」が減ることがあります。
「ルール」と「自由」のバランスを体で覚える
ピアノには楽譜(ルール)があります。でも、その中で「自分なりの弾き方」を見つける自由もあります。
ルールの中で自分を表現する力──これは、社会で生きていくうえで必要な、まさに「自己主張の技術」です。
4歳のTくんは、とてもわがままで──いえ、とても「自分の意志が強い」男の子でした。
レッスンでも「この曲はイヤ」「こっちの曲がいい」「もう終わり」と、自分の主張が次から次へと出てきます。
最初は正直、レッスンが進みませんでした。でも、私はTくんの「主張」をよく見ていました。「こっちの曲がいい」には、ちゃんと理由があったのです。「こっちのほうが音が好き」「こっちのほうが弾ける気がする」
そこで、Tくんに毎回「今日はどっちの曲からやる?」と選ばせるようにしました。自分で選んだ曲には、Tくんは驚くほど集中して取り組みます。
3か月後、Tくんは曲の弾き方にもこだわりを見せるようになりました。「ここは大きく弾きたい」「ここはそーっと」──あの「わがまま」が、「表現のこだわり」に変わっていたのです。
お母さまが「先生、うちの子のわがまま、ピアノのおかげで少し落ち着いた気がします」と言ったとき、私は「落ち着いたんじゃなくて、『出す場所』ができたんですよ」とお伝えしました。
よくある質問
「わがまま」は困りものに見えます。でも、その奥には「自分の気持ちがわかる力」と「それを伝えたい力」が育っています。
必要なのは、その力を「止める」ことではなく、「導く」こと。「イヤ!」しか持っていなかった表現手段に、もうひとつ加えてあげること。
ピアノは、「わがまま」を「表現力」に変える──いちばん自然な方法です。
今日の「イヤ!」が、明日のピアノの「この音が好き」に変わる日が来ます。
「わがまま」を「表現力」に変えるピアノ
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