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グリット──「やり抜く力」が子どもの未来を変える|才能より大切な力の育て方

「才能」よりも「やり抜く力」が成功を決める。
世界的ベストセラーが証明したこの事実は、
子育てにも大きなヒントを与えてくれます。

パズルがうまくいかないと、すぐに投げ出す。
ちょっと難しいことがあると「もうやだ」「できない」。
新しいことを始めても、すぐに飽きてしまう。

「うちの子、何をやっても続かないんです」
「もう少し粘り強くなってほしいのに」
「この先、大丈夫かな」

もしそう感じたことがあるなら、「グリット」という言葉を知ってほしいと思います。

グリットとは、「情熱」と「粘り強さ」を合わせた力──いわゆる「やり抜く力」のことです。

そしてこの力は、生まれつきの性格ではなく、経験を通じて育てることができます。

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グリットとは──「やり抜く力」の正体

グリット(GRIT)は、アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワース博士が提唱した概念です。

博士は、成功する人としない人の違いを長年研究する中で、ある結論にたどり着きました。

成功を決めるのは、才能でもIQでもない。
「情熱を持ち、粘り強くやり続ける力」──それがグリットである。

グリットは4つの要素で構成されています。

グリットの4つの要素

Guts(ガッツ)──困難に立ち向かう勇気
Resilience(レジリエンス)──失敗から立ち直る力
Initiative(イニシアチブ)──自分から動く主体性
Tenacity(テナシティ)──最後までやり遂げる粘り強さ

大切なのは、これらが「生まれつきの性格」ではないということです。
グリットは、環境と経験によって育てることができる力なのです。

なぜ「才能」より「グリット」が大切なのか

ダックワース博士の研究で、とても興味深い結果があります。

陸軍士官学校の過酷な訓練を最後までやり遂げた人、全米スペリング大会で優勝した子ども、トップセールスを達成した営業担当者──これらの「成功した人」に共通していたのは、才能やIQの高さではありませんでした。

共通していたのは、グリットの高さだったのです。

才能がある子がつまずく理由

「才能がある子は成功しやすい」と思われがちです。
でも、研究はむしろ逆のことを示しています。

才能がある子は、最初から上手にできてしまう。
すると、「努力しなくてもできる」という感覚が身につきます。
やがて壁にぶつかったとき、努力の仕方がわからず、そこで止まってしまう。

一方、最初は苦労した子でも、「練習すればできるようになる」という体験を積んだ子は、壁にぶつかっても「もう少し頑張ってみよう」と思えます。

大切なのは、「できるかどうか」ではなく「続けられるかどうか」
それがグリットの本質です。

子どものグリットを育てる──5つの方法

グリットは、日常の中で少しずつ育てることができます。
特別なトレーニングは必要ありません。大切なのは、親の関わり方です。

方法 1
「結果」ではなく「努力」を認める

「100点すごい!」ではなく「毎日コツコツやってたもんね」。
「上手に弾けたね」ではなく「難しいところ、何回も練習してたよね」。
結果を褒めると「結果が出なかったら自分はダメだ」と感じてしまいます。
努力を認めると「頑張ること自体に価値がある」と学びます。
この違いが、やり抜く力の土台を作ります。

方法 2
「まだ」の魔法を使う

「できない」と言ったら、「まだ、できないだけだよ」と返してあげる。
この「まだ」という一言が、子どもの中に「いつかできるようになる」という希望を残します。
心理学では「成長マインドセット」と呼ばれる考え方です。
「できない」は終わりではなく、「まだ途中」──この感覚がグリットを支えます。

方法 3
「小さなゴール」を設定する

いきなり大きな目標を立てると、達成できずに心が折れます。
「今日はこの1行だけ弾けるようになろう」「今週はこのページまで」──小さなゴールをたくさん用意する。
「できた!」の積み重ねが、「もう少し先まで頑張ってみよう」という気持ちを生みます。

方法 4
失敗を「データ」として扱う

「失敗した=ダメだった」ではなく「失敗した=次に活かせる情報が手に入った」。
「うまくいかなかったね。じゃあ、何を変えたらいいと思う?」と一緒に考える。
失敗を怖がらない子は、挑戦を怖がりません。
挑戦を怖がらない子は、やり抜く力が自然と育ちます。

方法 5
「やめどき」を一緒に考える

「何があっても絶対やめるな」は逆効果です。
大切なのは、「壁にぶつかったときに、すぐにやめない」こと。
「もう少しだけやってみて、それでもイヤだったらそのとき考えよう」──この「もう少しだけ」が、グリットのトレーニングです。
やり抜く力は「永遠に続ける力」ではなく「簡単には諦めない力」です。

グリットを潰してしまうNG声かけ

親としては良かれと思って言っている言葉が、実はグリットを潰してしまうことがあります。

NG 1:「才能があるね」「天才だね」

才能を褒めると、子どもは「才能がある自分」を維持しようとします。
すると、失敗するリスクのあることに挑戦しなくなります。
「頑張ったね」「工夫してたね」──努力を認める言葉に置き換えてみてください。

NG 2:「なんでできないの?」

この言葉は「できない自分はダメだ」というメッセージに聞こえます。
「どこが難しかった?」「一緒にやってみよう」──問いかけの形に変えるだけで、子どもの気持ちは大きく変わります。

NG 3:「○○ちゃんはできてるよ」

他の子と比べられると、子どもは「自分はダメだ」と感じます。
比べるなら、過去のその子自身と。
「先週よりここが上手になってるね」──成長を実感できる声かけが、グリットを育てます。

NG 4:「もういいよ、ママがやるから」

時間がないとき、つい言ってしまいがちです。
でもこの言葉は「あなたにはできない」と伝えているのと同じです。
「時間はかかるけど、自分でやってみて」──この一言が、粘り強さを育てます。

ピアノとグリット──なぜ「やり抜く力」が育つのか

ここで、ピアノ教室の先生として実感していることをお伝えします。

ピアノは、グリットを育てるのにとても適した習い事です。
なぜなら、ピアノのレッスンには「やり抜く力」を引き出す仕組みが自然と組み込まれているからです。

1「弾けない→弾ける」を繰り返し体験できる

ピアノは、1曲を仕上げるまでに必ず「弾けない時期」を通ります。
何度も練習して、少しずつ指が動くようになって、ある日突然弾けるようになる。
この「できなかったことが、続けたらできた」という体験こそ、グリットの原点です。
しかも、この体験をレッスンのたびに繰り返すことができます。

2「小さなゴール」が自然と設定される

「今日は右手だけ」「この4小節を弾けるようにしよう」「テンポをゆっくりで」──。
ピアノのレッスンでは、先生が子どものレベルに合わせて小さな目標を設定します。
いきなり1曲全部を求めるのではなく、階段を一段ずつ登る感覚。
この「少しだけ頑張れば届く目標」が、やり抜く力を育てます。

3「努力の成果」が音で実感できる

勉強の成果は、テストが返ってくるまでわかりません。
でもピアノは違います。練習した分だけ、自分の耳で「上手になった」と実感できます。
「昨日より滑らかに弾ける」「ここの音がきれいになった」──努力と成果の関係を、自分の感覚で理解できるのがピアノの大きな特徴です。

4発表会という「やり遂げる経験」

発表会に向けて何週間も練習し、本番でステージに立ち、最後まで弾ききる。
この「長い期間をかけて1つのことをやり遂げる」体験は、グリットを大きく成長させます。
緊張しても、間違えても、最後まで弾く。その経験が「自分はやり抜ける人間だ」という自信になります。

5先生という「伴走者」がいる

一人で頑張り続けるのは、大人でも難しいことです。
ピアノには、毎週のレッスンで見守ってくれる先生がいます。
うまくいかないときに励まし、少しでも成長したら認めてくれる存在。
この「一人じゃない」という安心感が、やり抜く力を支えます。

レッスンでのエピソード

5歳のKくんは、最初のころ本当に「すぐ諦める子」でした。

新しい曲をもらうと「むずかしい」「できない」が口癖。
1回弾いてうまくいかないと、すぐに鍵盤から手を離してしまっていました。

私がしたのは、ただ1つ。
「右手の最初の3つの音だけ、弾いてみよう」──それだけ。

3つの音が弾けたら「できたね!じゃあ次の3つ」。
これを繰り返しました。

3か月後、Kくんに変化が起きました。
新しい曲をもらったとき、「まず右手からやってみる」と自分から言ったのです。

ママに聞くと、「家でも、難しいことがあると『まずここだけやってみる』と言うようになった」とのこと。

Kくんは「才能」が伸びたのではありません。
「やり抜き方」を覚えたのです。

グリットは「根性」とは違う

ここで、ひとつ大切なことをお伝えします。

グリットは「根性」や「我慢」とは違います。

グリットと根性の違い

根性──「つらくても歯を食いしばって耐える」。外からの強制。苦しさが前提。

グリット──「自分がやりたいことに、情熱を持って粘り強く取り組む」。内側からの動機。楽しさが土台。

つまり、「嫌なことを無理に続けさせる」のはグリットではありません

子ども自身が「もっとやりたい」「上手になりたい」と感じている。
その気持ちを支えながら、壁にぶつかっても一緒に乗り越えていく。
それがグリットを育てるということです。

だからこそ、習い事選びでは「子どもが楽しんでいるかどうか」が最も大切な基準になります。

よくあるご質問

Q. うちの子は何をやってもすぐ飽きます。グリットがないのでしょうか?
A. 幼児期に「飽きやすい」のはとても自然なことです。興味の対象が次々と変わるのは、好奇心が旺盛な証拠でもあります。大切なのは「何か1つ」でも少しだけ続けてみる経験を持つこと。その1つがピアノでも、スポーツでも、工作でも構いません。
Q. グリットは何歳から育てられますか?
A. 3歳ごろから、日常の中で少しずつ育てることができます。「靴を自分で履く」「パズルを最後まで完成させる」──こうした小さな「やり遂げる体験」がグリットの種になります。ただし、発達段階に合わない高すぎる目標は逆効果です。
Q. ピアノの練習を嫌がるとき、無理にやらせるべきですか?
A. 無理にやらせるのはグリットではなく「強制」です。嫌がるときは、まず理由を聞いてみてください。「難しすぎる」なら目標を小さくする。「飽きた」なら曲を変えてみる。「疲れている」なら今日は休む。柔軟に対応しながら「続ける」ことが大切です。
Q. グリットが高い子は将来どうなりますか?
A. 研究によると、グリットが高い人は学業成績、仕事のパフォーマンス、健康状態、人間関係のすべてにおいて良い結果を出す傾向があります。これは「才能がある」からではなく「粘り強く取り組める」からです。この力は、一生の財産になります。

「やり抜く力」は、一生の財産になります。

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この記事を書いた人

pianonogiftのアバター pianonogift 東京都出身。東京音楽大学器楽専攻(ピアノ演奏家コース)卒業。 フォルクヴァンク芸術大学(ドイツ)短期留学奨学生。 在学中、東京文化会館やサントリーホール等多数演奏会に出演する他、私立幼稚園で音楽講師も務める。 第41回ピティナピアノコンペティション特級銅賞。 第12回北本ピアノコンクールG部門(大学生)第1位、及び最優秀賞。 第18回日本演奏家コンクール第2位(大学生の部)。 東京フィルハーモニー交響楽団、ウィーン岐阜管弦楽団と協演。 かずさFM、TBSラジオ「檀れい 今日の1ページ」出演。

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