自我を持ったひとりの人間である子どもに、親として、ピアノの先生として、私が伝えられることは何だろう。そんなことを考えています。
子どもは「小さな他人」である
生まれたばかりの息子を見ていると、この子は私とは違う人間なんだ、と強く感じます。
顔は似ているかもしれない。でも、好きなもの、嫌いなもの、感じ方、考え方は全部この子のものです。私の延長線上にいるのではなく、まったく独立したひとりの人間。
この当たり前のことを忘れてしまうと、子育てはどんどん苦しくなります。「なんでわかってくれないの」「なんで言う通りにしないの」。それは、子どもを自分の一部だと思っているから出てくる感情です。
レッスンで出会う「自我の芽生え」
ピアノのレッスンをしていると、子どもの自我が芽生える瞬間に出会います。
「この曲はやりたくない」「もっと速く弾きたい」「自分で選びたい」。それまで先生の言うことを素直に聞いていた子が、急に自己主張を始める時期があります。
これを「反抗」と見るか、「成長」と見るか。私は、間違いなく成長だと思っています。
「自分で選びたい」は、「自分の人生を歩き始めた」ということ。
それは、祝福すべき成長です。
親が「与えられること」は何か
自我を持った他人である子どもに、私たち親が与えられるものは何でしょうか。
知識やスキルは、学校や先生が教えてくれます。でも、親にしか与えられないものがあります。
安心できる場所
失敗しても、泣いても、怒っても、帰る場所がある。その安心感は、親にしか与えられません。ピアノのレッスンでも、「ここは安全な場所だ」と感じてもらうことを大切にしています。安心があるから、挑戦できるのです。
「あなたはあなたでいい」というメッセージ
他の子と比べない。理想の子ども像を押しつけない。「あなたのままでいい」と伝え続けること。簡単なようで、とても難しいことです。でも、このメッセージを受け取った子どもは、自分の人生を自分で歩く力を持ちます。
豊かな「体験」
答えを教えるのではなく、体験する機会を与えること。音楽に触れること、自然のなかで遊ぶこと、人と関わること。体験のなかから、子どもは自分なりの答えを見つけていきます。ピアノも、そのひとつの体験です。
ピアノは「自分で選ぶ」練習の場
ピアノのレッスンでは、子ども自身が選ぶ場面をたくさん作るようにしています。
「次はどの曲にする?」「ここ、どう弾きたい?」「強く弾く? 優しく弾く?」
小さな選択の積み重ねが、「自分で決められる子」を育てます。自分で決めたことには、責任感も生まれます。そして、自分で決めて弾いた音は、言われて弾いた音よりも、ずっと生き生きしています。
一緒に歩く旅のパートナーです。
その子の「自分」が花開く日を、
隣で見守れることが、いちばんの幸せだと思います。
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