「悪い子なんていない。いるのは、自分の気持ちをうまく伝えられずに困っている子どもだけ」
これは、世界中のママたちから支持されている子育ての専門家、ジャネット・ランズバリーの言葉です。
彼女が伝える「子どもをまるごとの人として尊重する」という考え方は、ピアノノギフトが大切にしている「才醒(さいせい)」の理念と、深いところでつながっています。
ジャネット・ランズバリーとは
Janet Lansbury(ジャネット・ランズバリー)
RIE認定インストラクター / 子育て教育者 / ポッドキャスター
ジャネット・ランズバリーは、アメリカの子育て教育者です。もともとは女優として活動していましたが、3人のお子さんの子育てをきっかけに、乳幼児教育の世界へ進みました。
雑誌『L.A. Parent Magazine』で、乳幼児教育の先駆者マグダ・ガーバーの言葉に出会い、その哲学に感銘を受けます。マグダのもとでRIE(Resources for Infant Educarers)を学び、1994年にRIE認定インストラクターとなりました。
以来、30年以上にわたって何千人もの親子を支援してきた経験をもとに、2冊の著書と人気ポッドキャスト「Unruffled」を通して、世界中のママやパパに「敬意ある子育て(Respectful Parenting)」を伝えています。
Elevating Child Care: A Guide to Respectful Parenting
赤ちゃんを「教えなくても自ら学べる存在」として捉え、食事・睡眠・遊び・コミュニケーションなどの場面で、どう敬意をもって関わるかを紹介した一冊です。
No Bad Kids: Toddler Discipline Without Shame
叱る・罰する・ご褒美で動かすのではなく、子どもの気持ちを受け止めながら境界線を示す方法を、具体的な場面ごとに解説しています。
RIEの原点:マグダ・ガーバーの哲学
ジャネットの教えを理解するには、その原点であるマグダ・ガーバー(1910–2007)の哲学を知ることが大切です。
ハンガリー出身の乳幼児教育者であるマグダは、1978年にロサンゼルスで非営利団体RIE(Resources for Infant Educarers)を設立しました。
RIEの中心にある考え方
赤ちゃんは、生まれたときからすでに「まるごとの人(whole person)」である。
自ら学び、探索し、発見する力を持っている。
大人の役割は「教え込む」ことではなく、安全な環境を整え、信じて見守ること。
マグダは、赤ちゃんを抱き上げるときも事前に声をかけること、赤ちゃんの頭越しに話すのではなく直接語りかけること、そして子どもの反応を待つことを大切にしました。
この「敬意(Respect)」がRIEのすべての土台です。ジャネットはこの哲学を受け継ぎ、現代の子育てに活かせる形で伝えています。
ジャネットの5つの教え
1. 子どもを「まるごとの人」として信じる
ジャネットは、赤ちゃんや幼い子どもを「何もできない存在」ではなく、「自分のペースで世界を学んでいく力を持った存在」として見ることを大切にしています。
彼女自身、初めてのお子さんが生まれたとき、あらゆるニーズに応えようと疲れ果てていました。しかしRIEの教室で1時間以上赤ちゃんを静かに観察したとき、わが子が自分のペースで周囲の世界を取り込んでいる姿に気づいたのです。
大人が「してあげなきゃ」と思い込んでいることの多くは、実は子ども自身が自分の力でできること。必要なのは、その力を信じて見守る大人の存在です。
2. スポーツキャスティング:見守る言葉の力
「スポーツキャスティング」は、マグダ・ガーバーが名付けた関わり方です。子どもが何かに取り組んでいるとき、ジャッジせず、助けすぎず、ただ目の前の事実を言葉にする方法です。
たとえばこんな場面
積み木が倒れて泣きそうになっている子どもに、「あ〜、倒れちゃったね」とだけ伝える。
「大丈夫だよ」とすぐに慰めたり、「こうすればいいよ」と直したりはしない。
子ども自身が気持ちを整理し、もう一度やってみるかどうかを決めるのを、見守ります。
ジャネットは、スポーツキャスティングについてこう説明しています。スポーツキャスターは、ジャッジしない、直さない、恥をかかせない、責めない。ただ事実を伝えるだけ。それが子どもへの深い信頼と敬意の表れなのだと。
3. 「悪い子なんていない」:行動の奥にある気持ち
著書『No Bad Kids』の中でジャネットが伝えているのは、子どもの「困った行動」は、その子が「悪い子」だからではなく、自分の気持ちをうまく伝えられずに困っているサインだということです。
ジャネットの境界線の示し方
子どもが叩こうとしたとき、静かに手を止めて「叩かせないよ(I won’t let you hit)」と伝える。
怒鳴ったり罰したりはしない。子どもの気持ちは受け止めつつ、行動の境界線はしっかり示す。
この「気持ちを認める+行動の限界を示す」の組み合わせが、子どもに安心感を与え、自分で自分をコントロールする力(セルフディシプリン)を育てます。
4. 自由遊び(Uninterrupted Play):子どもが自分で学ぶ時間
ジャネットは、子どもが中断されずに自分のペースで遊ぶ時間を、とても大切にしています。
大人が遊び方を教えたり、楽しませようとしたりしなくても、子どもは自分で遊びを見つけ、試し、工夫する力を持っている。その力を信じることが、創造性、集中力、自己肯定感を育てる土台になると伝えています。
自由遊びが育てるもの(ジャネットが挙げる効果)
☑ 身体的・認知的スキルの発達
☑ 創造性と想像力
☑ 強い自己肯定感(sense of self)
☑ 内発的な動機づけ(自分からやりたいと思う力)
5. 敏感な観察(Sensitive Observation)
RIEの核にあるのが「敏感な観察」です。大人が自分の考えや意図を押しつけるのではなく、まず子どもをよく観察して、その子が何を伝えようとしているのかを理解すること。
ジャネットは、観察こそが「私たちの思い込み」と「子どもの本当の気持ち」の違いを知るための鍵だと伝えています。
ジャネットの教えとピアノノギフトの「才醒」
ジャネット・ランズバリーの教えに触れたとき、私たちピアノノギフトが大切にしている「才醒(さいせい)」と、深いところでつながっていると感じました。
RIEの哲学と才醒の共鳴
ジャネットの教え
子どもはすでに「まるごとの人」。自ら学び、探索し、発見する力を持っている
ピアノノギフトの才醒
子どもの中にすでにある才能が、音楽を通して目覚める瞬間を大切にする
ジャネットの教え
大人は「教え込む」のではなく、安全な環境で信じて見守る
ピアノノギフトの才醒
先生は「やらせる」のではなく、子どもの「弾きたい」を引き出し見守る
ジャネットの教え
スポーツキャスティングで、ジャッジせずに事実を伝える
ピアノノギフトの才醒
「できた!」を子ども自身が感じられるように、声かけを工夫する
レッスンでの一場面
ピアノの前に座った子どもが、なかなか弾き始めない。
以前の私なら「さあ、弾いてみよう」と声をかけていたかもしれません。
でも今は、少し待ちます。鍵盤を見つめているその子が、何を感じているのか。何を考えているのか。
やがてその子は、自分のタイミングで、そっと鍵盤に触れます。
その一音には、「先生に言われたから弾いた」のではない、自分から生まれた音楽があります。
ジャネットが伝える「信じて見守る」は、ピアノレッスンでもそのまま活きる考え方です。
子どもが自分のペースで音楽と出会い、自分の力で弾けるようになっていく。その過程を、急かさず、決めつけず、見守ること。
それが、子どもの中に眠っていた力が目覚める「才醒」の瞬間につながります。
子どもは、教え込まなくても自分で学ぶ力を持っている。ジャネット・ランズバリーとマグダ・ガーバーが30年以上伝えてきたこの信念は、ピアノノギフトのレッスンの中でも、毎日のように実感することです。「弾きたい」という子ども自身の気持ちから始まる音楽は、どんなに素晴らしいカリキュラムよりも、その子を遠くまで連れていってくれます。
ママへのメッセージ
ジャネットの教えの中で、ピアノを習うお子さんのママにとくに届けたいことがあります。
それは「見守る」ということの意味です。
おうちでの練習で、お子さんが同じところで何度もつまずいていると、つい「こうでしょ」「もう一回」と言いたくなります。
でも、ジャネットの言葉を借りれば、子どもには自分で乗り越える力がある。必要なのは、その力を信じて、安全な環境で見守ること。
おうちの練習で活かせるジャネットの知恵
☑ つまずいているとき、すぐに直さずに「ここ難しいね」と事実を伝える(スポーツキャスティング)
☑ できたとき、大げさに褒めるより「自分でできたね」と子ども自身の達成を認める
☑ 練習を嫌がるとき、気持ちを受け止めつつ「今日は何を弾きたい?」と選択肢を渡す
☑ うまくいかなくて泣いても、すぐに助けず、気持ちが落ち着くのを待ってみる
ピアノの練習は、子どもが「自分の力で何かを乗り越える経験」を積める、とても特別な時間です。
ジャネットが伝える「信じて見守る」を、ぜひおうちのピアノの時間にも取り入れてみてください。
子どもの「弾きたい」を信じるレッスンを、体験してみませんか?


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