「ムーン・リバー」。タイトルを聞いて、サビのメロディがふっと頭に流れた方も多いのではないでしょうか。
この名曲を書いたのが、ヘンリー・マンシーニ。映画『ティファニーで朝食を』や「ピンクパンサー」の音楽で知られる作曲家です。今日は、彼の作曲の手法を、私なりの目線で解きほぐしてみます。
なぜこの話をするかというと、マンシーニの「やさしさ」の作り方には、子どもが音楽を好きになるヒントが、たくさん詰まっているからです。
映画音楽に、ジャズの風を入れた人
マンシーニが登場するまで、映画音楽といえば、重厚なクラシック様式が主流でした。そこへ彼は、ジャズやポップスの軽やかさを持ち込みます。
テレビドラマ「ピーター・ガン」のテーマで聴かせた、おしゃれで歯切れのよいジャズのサウンドは、当時とても新鮮でした。映画監督ブレイク・エドワーズとは、35年で30本もの作品を一緒に作っています。マンシーニは、映画音楽を「もっと身近で、もっと口ずさめるもの」へと変えた革新者なのです。
「観客が口ずさめる」ことを、いちばんに
マンシーニが大切にしたのは、むずかしく聴かせることではなく、観た人が覚えて帰れるメロディでした。歌のようにシンプルな形で、心にすっと残る。
だからこそ、彼の音楽は何十年たっても色あせません。複雑さで感心させるのではなく、覚えやすさで愛される。これは、子どもが最初に出会う音楽として、とても理想的なあり方だと私は思います。
「ムーン・リバー」は、歌う人のために書かれた
「ムーン・リバー」がこれほど誰にでも歌えるのには、はっきりした理由があります。この曲は、映画で歌った女優オードリー・ヘプバーンの声に合わせて、書かれたのです。
声域がそれほど広くない彼女でも、無理なく歌えるように。マンシーニは、あえて音の幅をせまく保ち、やさしい三拍子のワルツにしました。制約があったからこそ、誰でも歌える名曲が生まれた。難しくしないことが、いちばん多くの人に届く——その大切さを教えてくれます。
音色ひとつで、世界をつくる
マンシーニのもう一つの魔法が、楽器の選び方です。「ピンクパンサー」では、サックスがそっと忍び寄るように鳴り、いたずらっぽい空気を一瞬でつくります。一方「ムーン・リバー」では、ハーモニカの素朴な音が、なつかしさを運んできます。
同じメロディでも、どんな音で鳴らすかで、世界はまるで変わる。音色は、いわば音の「表情」です。マンシーニは、その表情を選ぶ達人でした。
子育ても、ピアノも、「やさしさ」から
ここまで読んでくださったあなたに、伝えたいことがあります。マンシーニが教えてくれるのは、上手にむずかしく弾くことより、口ずさめる一曲を大切にすることの豊かさです。
なぜなら、お子さんの声や手に合った曲を選ぶことは、「できた!」というよろこびに、いちばん早くつながるから。ムーン・リバーのように、その子に寄り添って選べば、シンプルな曲でも、立派な宝物になります。
私がピアノノギフトで大切にしているのも、その子に寄り添う「やさしさ」です。日比谷・三田・田町の教室では、体験レッスンをご用意しています。お子さんが口ずさみたくなる一曲を、私と一緒に見つけてみませんか。

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