「褒めればいいの? 叱ったほうがいいの?」
ピアノの練習やレッスンで迷うこの問題。
答えは「どちらも大切。でも、伝え方がすべて」です。
お子さんがピアノの練習をしているとき。
「上手だね!」と褒めたら調子に乗ってふざけ始めた。
「もっとちゃんと弾きなさい」と叱ったら泣いてしまった。
褒めても叱っても、なんだかうまくいかない。
「結局、どう声をかけたらいいの?」
その気持ち、とてもよくわかります。
実は、大切なのは「褒めるか叱るか」ではなく、「何を褒めるか」「どう叱るか」です。
この記事では、ピアノレッスンの現場で実際に使っている褒め方・叱り方のコツと、家庭でも使えるヒントをお伝えします。
「褒め方」で、子どもの伸び方が変わる
褒めることは大切です。でも、褒め方によって効果がまったく違います。
結果を褒める vs 過程を褒める
「上手!」「すごい!」「天才!」
「何度も練習したもんね」
「難しいところ、あきらめなかったね」
「上手!」「すごい!」は嬉しい言葉ですが、繰り返すと落とし穴があります。
結果だけを褒められた子は、「上手に弾けないとダメなんだ」と思うようになります。すると、難しい曲に挑戦するのを避けるようになる。失敗を恐れるようになる。
一方、過程を褒められた子は、「がんばること自体に価値がある」と感じます。うまく弾けなくても、挑戦したことを認めてもらえるから、次もまた挑戦できるのです。
ピアノレッスンで使っている「褒め方」5つ
「上手だね」ではなく、「今の小指の音、きれいに出てたよ」「リズムがぴったりだったね」と、具体的に何が良かったかを伝えます。
具体的に褒められると、お子さんは「次もこうやればいいんだ」とわかります。「何を」褒められたかがわかると、再現できるようになります。
「先週よりスムーズになったね」「前は止まってたところが、今日はつながったね」
「前の自分」と比べて成長していることを伝えると、お子さんは「自分は伸びている」と実感できます。
「毎日ちょっとずつ練習したんだね」「難しくてもあきらめなかったね」
結果が出なくても、がんばった事実そのものを認めてあげる。これが、お子さんの「挑戦する心」を育てます。
「この曲、好きなんだね。弾いてるときの顔がすごく楽しそうだった」
技術ではなく、音楽を楽しむ気持ちを認める。これは「ピアノ=楽しいもの」という感覚を育てるうえで、とても大切な褒め方です。
「今のところ、自分で『違う』って気づいたでしょ? それがすごいんだよ」
間違いに自分で気づける力は、とても高い能力です。ミスを指摘するのではなく、「気づけた自分」を褒めてあげると、自己修正力が育ちます。
「叱り方」で、子どもの心が守れる
ピアノの練習で、叱らなければならない場面もあります。ふざけている。集中していない。約束を守らない。
叱ること自体は悪いことではありません。大切なのは、「叱り方」で子どもの心を傷つけないことです。
やってはいけない叱り方
「なんでできないの」
「ダメな子ね」
「今のやり方だとうまくいかないね」
「こうしてみたらどうかな」
「なんでできないの」と言われると、お子さんは「自分はダメなんだ」と感じます。叱るときは、人格ではなく行動に焦点を当てる。これが鉄則です。
「ちゃんとやらないなら
ピアノやめなさい」
「次はがんばろうね」
「明日はどうやってみる?」
罰を与えると、お子さんの中に不安が生まれます。不安を抱えた子は萎縮して、挑戦できなくなります。叱ったあとは、「次はどうする?」と未来に目を向けてあげてください。
「〇〇ちゃんはもう弾けてるよ」
「先週よりここが良くなったね、
あとはこの部分だね」
ピアノレッスンで使っている「叱り方」のコツ
「ここまでは上手に弾けてたよ。でも、ここからちょっと集中が切れちゃったね」
いきなり指摘するのではなく、まず良かったところを認めてから改善点を伝える。この順番だけで、お子さんの受け取り方がまったく変わります。
「ここが難しいんだね。どうしたらうまくいくかな?」
一方的に指示するのではなく、お子さん自身に考えさせる。「自分で解決策を見つけた」という経験は、次の挑戦への自信になります。
ママがイライラしているときに叱ると、必要以上にきつくなってしまいます。
「今日はちょっとイライラしてるかも」と思ったら、練習は短めにして切り上げる勇気も大切です。ママの感情が落ち着いているときのほうが、言葉はちゃんと届きます。
叱ったままで終わらない。必ず最後にフォローを入れます。
「さっきはちょっと厳しく言っちゃったね。でも、がんばってるのはわかってるよ」このひと言があるだけで、お子さんは「ママは自分の味方だ」と感じられます。
レッスンで実際にあった「褒め方・叱り方」の場面
曲を弾き終えたNちゃん(5歳)。でも途中で1か所ミスがありました。本人も気づいている顔。ここで「もう一回弾いて」と言うと、「せっかく弾いたのに」と思ってしまいます。だから、まず「最後まで弾けたね!」と認めてから、「1か所だけ気になったところがあったんだけど、自分でもわかった?」と聞きます。Nちゃんが「ここ」と指さしたら、「自分で気づけたね。じゃあ、そこだけもう一回やってみよう」と。全部やり直すのではなく、ピンポイントで。
レッスンに来たOくん(4歳)。先週と同じところで止まる。明らかに練習していません。ここで「練習してきた?」と聞くと、嘘をつくか黙り込むかのどちらか。だから、聞きません。「じゃあ今日、ここで一緒にやろう!」と切り替えます。帰り際に「今日のレッスンでできるようになったね。お家でも1回だけ弾いてみて」と声をかける。「1回だけ」というハードルの低さが、次の練習につながります。
レッスン中にふざけ始めたPちゃん(3歳)。鍵盤をでたらめに叩いて笑っています。ここで「ちゃんとしなさい!」と言うと、楽しい気持ちごと否定してしまいます。だから、まず一緒に笑います。「おもしろい音だね!」と。そのうえで、「じゃあ先生の音も聴いて。こんな音はどう?」と切り替える。ふざけているように見えても、「音を出すのが楽しい」のです。その気持ちは否定せず、方向だけ変えてあげます。
家庭での練習にも使える「声かけ」まとめ
「今の音、きれいだったよ」(具体的に)
「先週より上手になったね」(変化を)
「毎日ちょっとずつ練習してたもんね」(過程を)
「楽しそうに弾いてたね」(気持ちを)
「自分で間違いに気づけたね」(気づきを)
「ここまでは良かったよ。ここだけ一緒にやってみよう」(認めてから)
「どうしたらうまくいくかな?」(一緒に考える)
「がんばったね。次はここに気をつけてみよう」(未来に目を向ける)
「さっきはちょっと厳しく言っちゃったね」(フォロー)
「以前は『もっとちゃんと弾きなさい』ばかり言っていました。でも先生から『具体的に褒めてみてください』とアドバイスをもらって、『今のドの音、きれいだったよ』と言ってみたんです。
そしたら、娘の顔がぱっと変わって。『ほんと?もう一回弾く!』と。
たった一言変えただけなのに、娘のピアノへの気持ちがこんなに変わるんだと驚きました。今は、毎日の練習がケンカの時間ではなく、親子のコミュニケーションの時間になっています。」
よくある質問
褒め方ひとつで、お子さんのピアノへの気持ちが変わります。叱り方ひとつで、お子さんの心が守れます。
「上手!」の代わりに、「がんばったね」。「なんでできないの」の代わりに、「次はどうしてみる?」。
たった一言の違いが、お子さんの「ピアノが好き」を育てます。
「褒め方」で変わる、ピアノの時間
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