お子さんの気持ちを受け止めたいと思っているのに、とっさに「大丈夫でしょ」「泣かないの」と言ってしまったこと、ありませんか?
私もあります。レッスン中に泣いた子に「大丈夫だよ」と言いながら、本当にその子の気持ちに触れていたかな、と後から思うことがあります。
フィリッパ・ペリーの『自分の親に読んでほしかった本』を読んで、ずっと心に残っている言葉がいくつかあります。今日はその言葉を、ピアノノギフトの教室でどう活かしているか──そして、いまお腹の中にいる我が子にどう届けたいか──をお話しします。
この本について
『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』
著者はイギリスの心理療法士フィリッパ・ペリー。世界46か国で200万部以上読まれているベストセラーです。
この本は「こう育てなさい」というハウツーではありません。「あなた自身がどう育てられたか」を振り返ることから始まり、「だからこそ、子どもとの間でこういうことが起きるんだ」と気づかせてくれる本です。
完璧な親になるための本ではなく、「間違えたとき、どう修復するか」を教えてくれる本。だからこそ、何度も読み返したくなります。
心に残った5つの教え
① 感情を「受け止める」と「解決する」は違う
ペリーが繰り返し伝えているのは、「子どもの感情を受け止めなさい」ということ。でもこれ、「解決してあげる」こととは全然違うんです。
子どもが泣いているとき、「どうしたの?こうすればいいよ」と解決しようとするのは、じつは子どもの感情を「早く終わらせたい」という大人の都合かもしれない。
本当の「受け止め」は、「悲しかったんだね」「くやしかったんだね」と、その感情をそのまま認めてあげること。解決は、その後で十分。
② すべての行動は「メッセージ」である
子どもが癇癪を起こしたとき。ピアノの鍵盤をバンバン叩いたとき。「やめなさい」と止める前に、その行動が何を伝えようとしているのかを考えてみる。
ペリーは言います。「すべての行動はコミュニケーションだ」と。
イライラして鍵盤を叩くのは、「うまくいかなくて悔しい」かもしれない。レッスン中に走り回るのは、「ここに自分の居場所がない」と感じているのかもしれない。行動の裏にある気持ちを読み取ろうとするだけで、関わり方が変わります。
③ 「断裂」と「修復」── 間違えたあとが大切
この本でいちばん救われた考え方がこれです。親も先生も、間違える。感情的に叱ってしまうこともある。子どもの気持ちを無視してしまうこともある。
ペリーは「断裂(rupture)は避けられない。大切なのは修復(repair)だ」と言っています。
「さっきはごめんね。あなたの気持ちをちゃんと聞いてなかったね」。その一言が、子どもに「この人は信頼できる」と感じさせる。完璧でいることより、間違えたあとにどう向き合うかのほうが、ずっと大切なのです。
④ 親自身の「子ども時代」が子育てに影響している
ペリーの本は第1章で「あなた自身の育てられ方」を振り返ることから始まります。
自分が子どものころ、感情を受け止めてもらえなかった経験がある人は、我が子の感情に向き合うとき、無意識にフタをしてしまうことがある。それは「自分が同じ年齢だったとき抱いた感情から、自分を守るための手段」だとペリーは説明しています。
この気づきは痛いけれど、とても大切です。「なぜ私はこの場面でイライラするんだろう」と立ち止まれるようになるから。
⑤ 「完璧な親」は存在しない
本の中で何度も繰り返されるメッセージがあります。「完璧な人間などいないし、私たちはみな間違いをおかします。大事なのは、その間違いをどうやって正すかです」。
この言葉に、どれだけ救われたか。レッスン中に「あ、今の声かけ、よくなかったな」と思うことは、正直たくさんあります。でも、「完璧でなくていい。修復すればいい」と知っていることで、次の一歩が出せる。
ピアノノギフトのレッスンにどう活かしているか
この本を読んでから、教室での私の関わり方が少しずつ変わりました。
「弾きたくない」と言った子への対応
以前の私なら、「じゃあ、この曲にしてみようか」とすぐに解決策を出していたと思います。
でも今は、まず「弾きたくないんだね」とだけ言います。そうすると、その子の表情が少し変わる。「うん…なんか今日はイヤ」「手がつかれた」「この曲きらい」。自分の言葉で理由を話してくれることが多いのです。
感情を受け止めてもらえた子は、自分で次の一歩を見つけます。「じゃあ、こっちの曲やってみる」と自分から動き始めることもある。それが、ペリーの言う「containment(感情の受け止め)」の力です。
「行動=メッセージ」を読み取る
レッスン中にふざけ始める子がいます。椅子をぐるぐる回したり、ピアノの蓋を開けたり閉めたりする。
前なら「集中して」と言っていたかもしれません。でも今は、「この子は何を伝えたいんだろう」と考えます。たいてい、答えは「つまらない」「難しすぎてついていけない」「今日は疲れている」のどれかです。
行動を止めるのではなく、行動の裏にある気持ちに気づいてあげる。すると、子どもは「この先生は自分のことを見てくれている」と安心します。安心した子は、自分からピアノに向かいます。
「断裂」が起きたあとの修復
正直に書きます。私も、レッスン中に「ちょっと強く言いすぎたな」と思うことがあります。お子さんの目が少し曇ったのが見えたとき、胸がきゅっとなります。
でも、「さっきの言い方、ちょっとこわかったかな。ごめんね」と言えるようになりました。この一言を言ったとき、お子さんがほっとした顔をするのを何度も見ています。
間違えないことではなく、間違えたあとにちゃんと戻ってくること。それが、信頼をつくるいちばんの方法だとペリーは教えてくれました。
「子どもの感情を受け止める」「行動の裏のメッセージを読む」「断裂のあとに修復する」。この3つが、いま私がレッスンでいちばん意識していることです。テクニックを教えることと同じくらい──いえ、それ以上に大切にしています。
お腹の中の我が子に、思うこと
まだ会えていないあなたへ
いま私のお腹の中に、小さな命がいます。
ペリーの本の第4章は「妊娠と出産」について書かれています。そこに、「赤ちゃんとの関係は、生まれる前から始まっている」という言葉がありました。お腹をさすったとき、声をかけたとき、もうそこに「関わり」は生まれている、と。
この本を読んで、私は自分の子ども時代のことをたくさん思い出しました。嬉しかったことも、さみしかったことも。親に言ってほしかった言葉も、言ってほしくなかった言葉も。
全部思い出した上で、思うことがあります。
私は完璧な母にはなれない。きっとイライラもするし、余裕がなくて声を荒げてしまう日もあるでしょう。でも、そのあとに「ごめんね」と言える母でいたい。あなたの気持ちを「そんなの大丈夫でしょ」と流さない母でいたい。
あなたが泣いたとき、「泣いていいよ」と言える人でありたい。あなたが怒ったとき、「怒ってるんだね」と認められる人でありたい。
まだ会えていないけれど、もう関わりは始まっている。お腹に手を当てるたびに、そう思っています。
この本から学んだことを、レッスンに来てくれるお子さんたちにも
「才醒」の根っこにあるもの
ピアノノギフトが大切にしている「才醒(さいせい)」──子どもの内側にある力が自然に目覚めていくのを見守る。この考え方の根っこにあるのは、まさにペリーが伝えていることと同じだと感じています。
子どもを「正しい方向」に動かそうとするのではなく、その子の感情を受け止め、行動の裏にあるメッセージに耳を傾け、間違えたら修復する。
大人がそういう姿勢でいるとき、子どもは安心して自分の力を使い始めます。ピアノの前でも、それ以外の場所でも。
レッスンで大切にしていること
感情を受け止めてから、音楽の話をする。
行動の「裏」にある気持ちを想像する。
うまくいかなかった関わりは、ちゃんと修復する。
「完璧なレッスン」よりも「安心できる関係」を優先する。
ペリーの言葉を借りるなら、ピアノノギフトが目指しているのは「子どもの感情のコンテナ(容器)になること」。お子さんが嬉しいとき、くやしいとき、退屈なとき、どんな感情も安心して出せる場所でありたい。
そういう場所で音楽に出会えた子は、ピアノを「弾かなきゃいけないもの」ではなく、「自分を表現できるもの」として受け取ってくれる。私は、そう信じています。
読んでくださっている方へ
もしあなたが今、「子どもとの関わり方、これでいいのかな」と迷っているなら。この本はきっと、答えではなく「安心」をくれます。
完璧じゃなくていい。間違えたら修復すればいい。子どもの感情を受け止められなかった日があっても、次の日にもう一度向き合えればいい。
そして、もしピアノ教室を探しているなら──お子さんの気持ちを大切にしてくれる場所を選んでほしいと思います。技術だけでなく、心も育ててくれる場所を。
お子さんの「弾きたい」という気持ちは、安心できる関係の中で育ちます。ピアノノギフトは、その関係をいちばん大切にしている教室です。
お子さんの気持ちを受け止めながら、音楽の世界を一緒に広げてみませんか?
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