「ピアノ、やりたい!」
目をキラキラさせてそう言った女の子が、数年後には「ピアノなんて大嫌い」と言うようになる。
ピアノ講師をしていると、残念ながらこうしたお話を耳にすることがあります。誰かが悪いわけではありません。むしろ、まわりの大人はみんなその子のためを思って行動していたのです。
この記事では、ピアノが好きで始めたのに、ピアノが大嫌いになってしまった女の子のお話を通して、「好き」が「嫌い」に変わってしまう理由と、そうならないために親ができることをお伝えします。
※登場する女の子のお話は、よく見聞きするケースをもとに再構成したもので、特定の人物ではありません。
- ある女の子のお話
- どこで「好き」が「嫌い」に変わったのか
- 「好き」が「嫌い」に変わる5つの落とし穴
- そうならないための対処法6つ
- もし「嫌い」になってしまったら
- まとめ
1.ある女の子のお話
お友だちの家でピアノにふれたAちゃん。鍵盤を押すと音が鳴るのがうれしくて、帰り道もずっと「ピアノやりたい!」。ママは喜んで、近くのピアノ教室に通わせることにしました。最初のころは、家でも毎日のように自分からピアノの前に座り、知っている曲を何度も弾いていました。
6歳小学校に入るころ、初めての発表会。ママもパパも大喜びで、たくさんほめてくれました。「この子、才能があるのかも」。ママは練習時間を増やすことにしました。「毎日30分は弾こうね」。
8歳曲がむずかしくなり、思うように弾けない日が増えてきました。家では毎日「練習した?」「また間違えてる」。同じ時期に始めたお友だちがコンクールで賞をとったと聞いて、ママは少し焦り始めます。Aちゃんもコンクールに出ることになりました。
10歳練習の時間になると、Aちゃんはお腹が痛いと言うようになりました。ピアノの前に座っても、ママの顔ばかり気にしています。そしてある日、泣きながらこう言いました。
「ピアノなんて、大嫌い。もうやめたい」
Aちゃんのママは、決して意地悪だったわけではありません。娘の才能を伸ばしてあげたい、がんばる力をつけてほしい。そう願っていただけなのです。
2.どこで「好き」が「嫌い」に変わったのか
| 時期 | Aちゃんの心の中 | ピアノの意味 |
|---|---|---|
| 4歳 | 音が鳴るのが楽しい! | 大好きな遊び |
| 6歳 | ほめられてうれしい | ママが喜んでくれるもの |
| 8歳 | うまく弾けない、怒られる | やらなきゃいけないこと |
| 10歳 | 弾くのがこわい、逃げたい | ママをがっかりさせるもの |
ポイントは、Aちゃんにとってピアノの意味が、「自分が楽しいもの」から「ママのためのもの」へ少しずつ変わっていったこと。弾く理由が自分の外に移ったとき、「好き」は少しずつしぼんでいきます。
3.「好き」が「嫌い」に変わる5つの落とし穴
① 親の期待が、子どもの「好き」を追い越す
発表会でほめられた、才能があるかもしれない。そう感じたとき、親の期待はぐんと大きくなります。でも、子どもの「好き」の大きさは、急には変わりません。期待が「好き」を追い越したとき、ピアノは重荷になります。
② 練習が「義務」になる
「毎日30分」「練習した?」。練習の量や時間が決まり、確認されるようになると、ピアノは自分で選ぶものから、課されるものに変わっていきます。
③ 間違いばかりを指摘される
「また間違えてる」「そこ違う」。悪気はなくても、指摘ばかり受けていると、子どもはピアノ=怒られる場所と感じるようになります。
④ ほかの子と比べられる
「〇〇ちゃんはもう賞をとったのに」。比べられた子どもは、自分の成長ではなく、人との差ばかりを見るようになってしまいます。
⑤ 子どもの「サイン」を見逃す
練習前の腹痛、親の顔色をうかがう、ピアノの話をしなくなる。「嫌い」の前には、たいてい小さなサインがあります。そのサインに気づけるかどうかが、大きな分かれ道です。
4.そうならないための対処法6つ
始めたきっかけは、「音が鳴るのが楽しい」だったはず。上達や結果を求めたくなったときこそ、原点を思い出しましょう。ピアノを習う目的を、親の中で言葉にしておくと迷いにくくなります。
発表会やコンクールは、子どもが「出てみたい」と思ったときがタイミング。親が先に走りすぎないことが大切です。
「30分弾いた?」より「今日はどの曲が楽しかった?」。練習の量を確認するより、ピアノとの時間が楽しかったかに関心を向けてください。
家では、親はいちばんのファンでいてください。間違いの指摘は先生の役割。親は「聴かせて」「その曲好きだな」と喜ぶ係で十分です。
ほかの子ではなく、昨日より、先月より、どこが伸びたかを見る。それを言葉にして伝えると、子どもは自分の成長を誇りに思えます。
練習をいやがる、表情が暗い、ピアノの話をしなくなった。そんなサインに気づいたら、練習量を減らす・曲を変える・先生に相談するなど、早めに立ち止まりましょう。
ピアノを好きでいられることのほうが、ずっと大切。
5.もし「嫌い」になってしまったら
もし、すでにお子さんが「ピアノ嫌い」と言っていても、大丈夫。まずは、その気持ちを否定せずに受け止めることから始めましょう。
- 「嫌いになっちゃったんだね」と気持ちを言葉にする――理由を問い詰めるより、まずは受け止める
- 練習のプレッシャーをいったん外す――「今週は弾きたい曲だけ弾こう」など
- 好きな曲を弾いてみる――アニメの曲、流行りの曲など、本人が弾きたい曲から
- 先生に相談する――レッスン内容や曲を変えるだけで、気持ちが戻ることもあります
- 休む・やめるという選択肢も持っておく――一度離れて、また音楽が好きになる子もたくさんいます
大切なのは、ピアノを続けるかどうかよりも、音楽そのものを嫌いにさせないこと。ピアノから離れても、音楽はいつでもその子の人生に戻ってくることができます。
6.まとめ
- 「好き」が「嫌い」に変わるのは、まわりの大人が子どものためを思って行動した結果であることが多い
- 弾く理由が「自分の楽しさ」から「親のため」に移ると、「好き」はしぼんでいく
- 落とし穴は、期待の追い越し・義務化・指摘ばかり・比較・サインの見逃し
- 対処法:原点を忘れない/子どものペースで/楽しめたかに関心を/親は聴く人に/昨日のその子と比べる/サインで立ち止まる
- 「嫌い」になっても、受け止めて、プレッシャーを外せば、また音楽に戻ってこられる
子どもが「ピアノやりたい!」と言ったあの日の笑顔は、親にとっても宝物です。その笑顔を守るために必要なのは、特別な才能でも、厳しい練習でもなく、「好き」をいちばん大切にする大人のまなざしなのだと思います。
ピアノノギフトでは、上手に弾けることよりも先に、一生音楽を好きでいられる子を育てることを大切にしています。お子さんのピアノとの向き合い方に迷ったら、いつでも相談してくださいね。
ピアノノギフト 主宰 湖苗美
日比谷・三田・田町エリアの子どもピアノ教室。
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まずはお気軽にお越しください。


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