同じ曲を、同じ時間だけ練習していても、ぐんぐん伸びる子と、なかなか変わらない子がいます。
その違いを生んでいるもののひとつが、「セルフイメージ」。つまり、子どもが自分のことを「どんな自分だと思っているか」です。
「わたしはピアノを弾く人」と思っている子と、「ピアノをやらされている子」と思っている子。同じ鍵盤の前に座っていても、そこで起きていることはまったく違います。
この記事では、子どもはピアノを「弾いている」のか「弾かされている」のかという視点から、セルフイメージの育て方を考えます。
- セルフイメージとは?「自分はこういう人」という思い込み
- 「弾いている子」と「弾かされている子」の違い
- セルフイメージは、どうやってつくられるのか
- わが子はどっち?見分けるチェックリスト
- 「弾いている子」に変わる、親の関わり方5つ
- 親自身のセルフイメージも、子どもに映る
- まとめ|セルフイメージが、自分をつくる
1.セルフイメージとは?「自分はこういう人」という思い込み
セルフイメージとは、「自分はこういう人間だ」と自分自身が抱いているイメージのこと。「わたしは人前が苦手」「ぼくは算数が得意」「わたしは続かない性格」――こうした自分へのラベルです。
やっかいなのは、このイメージが事実かどうかに関係なく、行動を決めてしまうこと。「どうせ自分は続かない」と思っている人は、少しつまずいただけで「やっぱりね」とやめてしまいます。反対に「わたしはやり抜く人」と思っている人は、同じつまずきを「乗り越える途中」と受け止めます。
人は、自分が思っている自分らしく振る舞おうとする。だから、セルフイメージが、その人をつくっていくのです。
2.「弾いている子」と「弾かされている子」の違い
ピアノのレッスンでも、セルフイメージの違いははっきり表れます。
| 弾いている子 (わたしはピアノを弾く人) | 弾かされている子 (ピアノをやらされている) | |
|---|---|---|
| 練習の主語 | 「わたしが弾きたい」 | 「ママが弾けって言うから」 |
| うまくいかない時 | 「どうしたら弾けるかな?」 | 「もうやだ」「無理」 |
| 上達したとき | 「できた!次はこれやりたい」 | 「これで終わり?」 |
| 発表会 | 「聴いてほしい」 | 「失敗したら怒られる」 |
| 目線の先 | 音・曲・自分の成長 | 大人の顔色・時計 |
大切なのは、どちらも「同じ練習量」でありえるということ。外から見ると同じように座って弾いていても、心の中の主語が違うだけで、伸び方も、続く年数も、ピアノから受け取るものも大きく変わってきます。
3.セルフイメージは、どうやってつくられるのか
① まわりの大人の言葉
子どものセルフイメージは、身近な大人からかけられた言葉で大きく形づくられます。「あなたは飽きっぽいから」「どうせまた練習しないんでしょ」――何気ないひと言でも、繰り返されるうちに子どもは「自分はそういう子なんだ」と受け取っていきます。
② 小さな成功体験の積み重ね
「できた」という経験が積み重なると、「自分はやればできる人」というイメージが育ちます。だからこそ、目標は小さく、達成できるサイズで。大きな目標ひとつより、小さな「できた」をたくさん。
③ 自分で選んだ経験
曲を選ぶ、練習する順番を決める、今日の目標を自分で言う。「自分で決めた」経験は、「わたしがやっている」という感覚を育てます。逆に、すべて大人が決めていると、子どもはいつまでも「やらされている側」にいることになります。
4.わが子はどっち?見分けるチェックリスト
当てはまるものが多いほど、「弾かされている」寄りかもしれません。責めるためではなく、関わり方を見直すきっかけとして使ってみてください。
- 練習を始めるのは、ほとんど親の声かけから
- 練習中、何度も親の顔を見る
- 「あと何回弾けばいい?」とよく聞く
- 間違えると、すぐに手が止まる・泣く・怒る
- 自分から「この曲を弾きたい」と言ったことがあまりない
- ピアノの話を自分からしない
- 親が「練習しなさい」と言う回数が増えている
もし当てはまるものが多くても、大丈夫。セルフイメージはあとから何度でも書き換えられるものです。
5.「弾いている子」に変わる、親の関わり方5つ
① 「ピアノを弾く人」として扱う
「練習しなさい」ではなく、「今日は何を弾くの?」「この曲、また聴かせて」。すでにピアノを弾く人として接することで、子どものセルフイメージは自然とそちらへ近づいていきます。
② 結果ではなく「行動」と「変化」を言葉にする
「上手!」だけでなく、「昨日よりここがなめらかになったね」「自分で何回も弾き直してたね」。具体的な変化を伝えると、子どもは「自分は成長できる人」と感じられます。
③ 小さな選択権を渡す
「どの曲から弾く?」「今日は何回弾く?」。全部を任せる必要はありません。2択でもいいので、子どもが選ぶ場面をつくってあげてください。
④ 練習を「監視」ではなく「観客」として見る
横で間違いを指摘するより、いちばんのファンとして聴く。「ママ、聴きたいな」のひと言が、練習を“やらされるもの”から“聴いてもらえるもの”に変えます。
⑤ ネガティブなラベルを貼らない
「飽きっぽい」「すぐ諦める」は、口に出した瞬間から子どものセルフイメージになっていきます。困ったときは、性格ではなく、その場の行動について話すようにしましょう。
6.親自身のセルフイメージも、子どもに映る
最後に、少しだけママ・パパ自身のお話を。
子どもは、親の言葉以上に、親の姿を見ています。「わたしなんて」「どうせ続かないし」と口にするママの姿は、子どもにとって「人ってそういうものなんだ」という見本になります。
反対に、新しいことに挑戦したり、失敗しても笑って「次はこうしてみよう」と言ったりする親の姿は、子どもに「挑戦していいんだ」「失敗しても大丈夫なんだ」というイメージを手渡します。
子どものセルフイメージを育てたいなら、まずは自分自身に向ける言葉を、少しやさしく、少し前向きに。それがいちばんの近道かもしれません。
まだ「弾いている自分」に出会っていないだけ。
7.まとめ|セルフイメージが、自分をつくる
- セルフイメージは「自分はこういう人」という思い込み。事実に関係なく行動を決める
- 同じ練習量でも、「弾いている」か「弾かされている」かで伸び方が変わる
- セルフイメージは、大人の言葉・小さな成功体験・自分で選んだ経験でつくられる
- 「ピアノを弾く人」として接し、変化を言葉にし、小さな選択権を渡す
- 親自身のセルフイメージも、子どもに映っている
ピアノノギフトでは、レッスンの中で子ども自身が「選ぶ」「気づく」「できた」と感じる場面を大切にしています。ピアノを通して育てたいのは、上手に弾ける指だけではなく、「わたしはやればできる」「わたしは音楽が好き」という、自分への信頼です。
その感覚は、ピアノをやめたあとも、きっと一生その子を支えてくれる。そう信じて、今日も子どもたちと鍵盤に向かっています。
ピアノノギフト 主宰 湖苗美
日比谷・三田・田町エリアの子どもピアノ教室。
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