「主体的に動ける子に育ってほしい」
よく聞く言葉ですが、「自発的」と「主体的」の違いを考えたことはありますか?
そしてもうひとつ。同じように頭を使っているようで、まったく違うのが「悩む」と「考える」です。
今日は、似ているようで違うふたつの言葉の組み合わせから、子どもの育ちと、私たち大人の毎日について考えてみたいと思います。
「自発的」と「主体的」の違い
どちらも「自分から動く」という意味で使われますが、実は少し違います。
| 自発的 | 主体的 | |
|---|---|---|
| 何をするか | やるべきことは、すでに決まっている | 何をするかを、自分で考えて決める |
| 動き方 | 言われる前に、自分から取りかかる | 目的に合わせて、やり方を自分で工夫する |
| なぜやるか | やるべきことだから | 自分がそうしたいから、その意味がわかっているから |
| 結果 | やったことに満足しやすい | 結果を振り返り、次にどうするかまで考える |
つまり、自発的は「決められたことを、自分から進んでやる」こと。主体的は「何をするか、なぜするか、どうするかまで、自分で考えて選び、その結果も引き受ける」ことです。
主体的は、どの道を歩くかを自分で選ぶこと。
ピアノで考えると
ピアノの練習に置きかえてみると、違いがよくわかります。
自発的な練習
「宿題の曲を練習しなさい」と言われる前に、自分からピアノの前に座る。これはとても素晴らしいことです。
主体的な練習
「この曲は、もっとやさしい音で弾きたい」「この部分が苦手だから、今日はここだけ練習しよう」「次の発表会では、この曲に挑戦したい」。何をどう練習するかを自分で考え、工夫し、選んでいく。これが主体的な練習です。
自発的に練習できる子は「練習する習慣」を持っています。主体的に練習できる子は、そこに「自分の音楽」を持っています。
自発的は、主体的への大切なステップ
誤解しないでいただきたいのは、自発的が悪いわけではないということ。むしろ、主体性は段階を踏んで育っていきます。
小さな子どもに、いきなり「全部自分で決めて」と求めるのは難しいもの。まずは自分から取りかかる習慣ができ、そこから少しずつ「自分で決める」場面を増やしていけばいいのです。
主体性を育てる、親の4つの関わり方
1. 小さなことから選ばせる
「どの曲から弾く?」「今日は何分にする?」。選べることが増えるほど、子どもは「自分で決めていい」と感じられるようになります。
2. 「なぜ?」を一緒に考える
「どうしてこの曲を弾きたいの?」「どんなふうに弾きたい?」。理由を言葉にすることで、行動に自分なりの意味が生まれます。
3. 任せたら、口出しを減らす
選ばせたのに、結局大人が決め直してしまうと、子どもは「どうせ自分の意見は通らない」と感じてしまいます。
4. 結果も一緒に振り返る
うまくいかなかったときも、「次はどうしてみる?」と一緒に考える。自分で選んだ結果を自分で振り返る経験が、主体性を深めていきます。
「悩む」と「考える」の違い
もうひとつの組み合わせが、「悩む」と「考える」です。どちらも頭を使っているように見えますが、その中身はまったく違います。
| 悩む | 考える | |
|---|---|---|
| 頭の中 | 同じところをぐるぐる回っている | 一歩ずつ、前に進んでいる |
| 使っている言葉 | 「どうしよう」「なんで」 | 「何がわかれば」「どうしたら」 |
| 中心にあるもの | 不安や気持ち | 問いと、手がかり |
| 時間がたつと | 疲れだけが残る | 次の一歩が見えてくる |
『イシューからはじめよ』の著者・安宅和人さんは、「悩む」は答えが出ない前提で考えるふりをしていること、「考える」は答えが出る前提で建設的に組み立てていくことだ、という趣旨のことを書いています。同じ時間を使うなら、悩むより考えたい。そう思わせてくれる言葉です。
もちろん、悩むことが悪いわけではありません。悩むのは、それだけ大切に思っているから。ただ、悩みの中にいると気づいたら、「考える」へと少しずつ切り替えていけると、心がぐっと軽くなります。
悩みを「考える」に変える3ステップ
ステップ1|書き出す
頭の中だけで悩んでいると、同じことをくり返し思い浮かべてしまいます。まずは紙やスマホに、気になっていることを全部書き出してみましょう。目に見える形にするだけで、悩みは少し小さくなります。
ステップ2|問いの形にする
「どうしよう」を、「何がわかれば決められる?」「どうしたら少しよくなる?」という問いに変えます。問いになった瞬間、悩みは「考えるべきテーマ」に変わります。
ステップ3|次の一歩をひとつだけ決める
全部を一度に解決しようとしなくて大丈夫。「誰かに聞いてみる」「1回だけ試してみる」など、今日できる小さな一歩をひとつ決めましょう。動きはじめると、悩みは自然と「考える」に変わっていきます。
子どもが悩んでいるときは
子どもが「どうしよう」と悩んでいるとき、大人はつい答えを教えたくなります。でも、すぐに答えを渡すと、子どもが「考える」機会がなくなってしまいます。
まずは「そっか、悩んでるんだね」と気持ちを受けとめる。そのうえで、「何がわかったらいいかな?」「どうしたらいいと思う?」と、一緒に問いを立ててみてください。悩みを自分で「考える」に変えられた経験は、子どもが主体的に生きていくための、大切な力になります。
何を優先するか、どこまでやるか、どうやって1日を回すか。余裕のない日は、つい「どうしよう」とぐるぐる悩んでしまうこともあります。
そんなとき私は、手帳を開いて、気になっていることを書き出すようにしています。書いてみると、「悩んでいた」ことが「考えればいいこと」に変わっていく。
誰かに決められた道を進むより、自分で考えて選んだ道を進みたい。そして息子にも、いつか自分で考え、自分で選んで歩いていってほしいと思っています。
おわりに
自発的から、主体的へ。悩むから、考えるへ。
ふたつの言葉の違いは小さいようで、その先にある毎日は大きく変わります。大切なのは、自分の人生のハンドルを、自分の手で握ること。子どもにも、私たち大人にも、その力はちゃんと育てていけます。
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