「もっと働けばよかった」と言う人は、ほとんどいないそうです。
多くの人が思い返すのは、大切な人との時間や、伝えられなかった気持ち。そしてその中には、親子の関係も含まれています。
今日は、死ぬ前に後悔しやすい親子関係と、今から親ができることについて考えてみたいと思います。
少し重たいテーマかもしれません。でも、それは「今日をどう生きるか」を考えるための、やさしい問いでもあります。
人生の最期に多い5つの後悔
オーストラリアで緩和ケアの仕事をしていたブロニー・ウェアさんは、人生の最期を迎える人たちから聞いた言葉をもとに、多くの人に共通する5つの後悔をまとめました。
- 他人の期待ではなく、自分に正直に生きればよかった
- 働きすぎなければよかった
- 思い切って自分の気持ちを伝えればよかった
- 友人と連絡を取り続ければよかった
- 自分をもっと幸せにしてあげればよかった
参考:ブロニー・ウェア『死ぬ瞬間の5つの後悔』(新潮社)
この中の「働きすぎなければよかった」には、子どもの成長をそばで見られなかったことへの後悔も含まれていたそうです。そして「気持ちを伝えればよかった」は、まさに家族、親子の間で起こりやすい後悔ではないでしょうか。
親子関係で後悔しやすい7つのこと
1. もっと一緒に過ごせばよかった
忙しさを理由に、「あとでね」「また今度ね」を重ねてしまう。でも、子どもが「一緒に遊ぼう」と言ってくれる時期は、思っているよりずっと短いものです。
2. 「大好き」「ありがとう」をもっと伝えればよかった
言わなくても伝わっている、と思いがちな気持ち。でも、言葉にしてもらえた記憶は、子どもの心の支えとして一生残ります。
3. 叱りすぎた、比べすぎた
「もっとちゃんとしてほしい」という願いから、つい厳しくしてしまう。ほかの子と比べてしまう。その言葉が、子どもの心にどう残ったかを、あとになって思い返す人は少なくありません。
4. 子どもの話を、ちゃんと聴けばよかった
スマホを見ながら、家事をしながら、「うん、うん」と聞き流してしまった話。あのとき本当は、何を伝えたかったのだろう。
5. 親の理想を押しつけてしまった
「この子のため」と思って選んだ道が、本当は親の安心のためだったかもしれない。子どもが自分の人生を自分で選べるよう、見守ればよかったという後悔です。
6. 「ごめんね」が言えなかった
親だって間違えます。でも、親だからこそ謝れないこともある。素直に「ごめんね」と言えていたら、関係はもっとやわらかかったかもしれません。
7. 自分の親とも、もっと話しておけばよかった
親子関係は、私たちと子どもの間だけのものではありません。私たち自身も、誰かの子どもです。自分の親に「ありがとう」を伝えられたか、昔の話を聞いておけたか。それもまた、後悔として残りやすいことのひとつです。
今から親ができること
後悔の多くは、「特別なこと」ではなく、毎日の小さな積み重ねから生まれます。だからこそ、今日から変えることができます。
| 後悔しやすいこと | 今日からできること |
|---|---|
| 一緒に過ごす時間が少なかった | 1日10分、スマホを置いて子どもとだけ過ごす時間をつくる |
| 気持ちを伝えなかった | 寝る前に「大好きだよ」「生まれてきてくれてありがとう」と伝える |
| 叱りすぎた、比べすぎた | 比べる相手を「昨日のその子」にする |
| 話を聴かなかった | 話しかけられたら、手を止めて目を見る |
| 理想を押しつけた | 「あなたはどうしたい?」と聞いてから決める |
| 謝れなかった | 言い過ぎたら、その日のうちに「ごめんね」 |
| 自分の親と話さなかった | 親に電話をする、昔の話を聞いてみる |
完璧な親でいることではなく、
間違えても、何度でも結び直せる関係のこと。
どんなに気をつけていても、叱りすぎる日も、余裕のない日もあります。大切なのは、失敗しないことではなく、そのあとに「ごめんね」「大好きだよ」と結び直すこと。その積み重ねが、後悔の少ない親子関係をつくっていきます。
子ども時代は、思っているより短い
毎日が大変な時期ほど、「早く大きくなってほしい」と思ってしまうこともあります。でも、抱っこをせがまれる時期も、「見て見て」と呼ばれる時期も、いつか必ず終わりがきます。
手をつないで歩けるのは、あと何年だろう。一緒にお風呂に入れるのは、あと何回だろう。そう考えると、今日のなんでもない時間が、少しだけ特別に見えてきます。
今日の自分に聞いてみたい5つの問い
□ 今日、子どもの目を見て話を聴けた?
□ 今日、「大好き」か「ありがとう」を言えた?
□ 今日、子どもと一緒に笑った瞬間はあった?
□ 言い過ぎたことに「ごめんね」を言えた?
□ 最近、自分の親に連絡した?
全部にチェックがつかなくても大丈夫。明日、ひとつ増やせばいいのです。
音楽が残してくれるもの
ピアノの先生として、たくさんの親子を見てきて思うのは、音楽は「思い出」を残してくれるということです。
親子で一緒に歌った歌、寝る前に聴いた子守唄、発表会で弾いた曲。大人になってその曲を耳にしたとき、そのときの空気や、そばにいた人の表情まで、ふっとよみがえることがあります。
上手に弾けたかどうかよりも、「誰と、どんな気持ちで音楽を楽しんだか」。それが、子どもの心にいちばん長く残るものなのだと思います。
実家を離れる日には、「この子が成人するまで、私は死ねない」と思いました。
始まりがあれば、終わりがある。だからこそ、今この瞬間を噛みしめたい。
そして出産前、母と昔の日記や思い出話をたっぷりした夜のことも、今では宝物になっています。私も誰かの子どもで、母もまた、私を育てながら同じ気持ちを抱いていたのかもしれない、と。
後悔しない親子関係に、特別なことは必要ないのだと思います。今日、目の前のこの子と、ちゃんと向き合うこと。その小さな一日一日の積み重ねなのだと思います。
おわりに
「死ぬ前に後悔すること」を考えるのは、悲しいことではありません。それは、今日をどう生きたいかを、もう一度見つめ直すためのきっかけです。
今日、子どもに「大好きだよ」と伝える。話しかけられたら、手を止めて目を見る。言い過ぎたら、「ごめんね」と言う。そんな小さなことの積み重ねが、いつか振り返ったときに「いい親子だったね」と思える関係をつくってくれるはずです。
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